太陽の当たる場所 5

SPARK 17 side 2 ページ42

久しぶりにAちゃんに会って
自分がやらかした事の大きさが分かる。

Aちゃんが
無感情になってる。

俺の事を怒りもしないし
テレビを見ても笑わない。

芸人さんがいつもやる
Aちゃんの好きなテッパンネタでも笑わない。



この前まで「この展開絶対来るって分かってるのに結局笑っちゃうんだよねー」って言ってたのに。



無表情というか
目に光がなくてぼんやりしてる。



……俺のせいだよね。

いや『だよね』じゃない。
さすがに俺のせいだってわかる。



だって最後に会った時はあんなに悲しそうな顔したりしてたのに
今じゃ本当に無反応。



「そんな人形みたいなAちゃんじゃなくて前のAちゃんに戻ってよ」



まだ怒ってくれる方がいい。
なのにAちゃんは首をかしげる。

「私は私だよ？」

まるで俺が間違ってるみたいな言い方。



ゾクッとした。

これはわざとじゃない。



俺の事を怒ってて根に持ってて
もう私はニカには心閉ざしました、って言ってるんじゃなくて
Aちゃんは素で言ってる。



まるで感情だけどこかに無くして来ちゃったみたい。



腕をギュッて引っ張って引き寄せて
抱きしめてみた。

Aちゃんの体温は感じるけど
それ以外に何も感じなかった。



腕を解いてAちゃんを見たけど
Aちゃんは前みたいに照れたり今思えばどこか嬉しそうだったりもしない。



こんな事になるくらいなら
ちゃんと言えば良かった。

あの時はAちゃんに心配掛けたくなかったって。

風邪をうつしたくなかったんだって。



でもあの時の俺が感じ悪かっただけで
こんな感じになる？



他に何かあるはず。



Aちゃんの目を見つめる。

ただただ見つめてたら
ふとAちゃんの瞳の奥が揺れる。



「……っ」



ほら、何か隠してる。



でも

「ごめん、明日納品たくさんあるんだ。もう寝ないと」

Aちゃんは淡々と言うと俺から離れる。



「俺も寝る」

「そう」



Aちゃんについてって歯を磨いてジャンケンして交代で口を濯ぐ。



ベッドに入って手を繋いだけど
Aちゃんは握り返してくれなくて

「おやすみ」

会話も無く目を閉じた。




夜中にふと目が醒めるとAちゃんが居なくて。

あれ？と思って辺りを見渡すと
トイレの音がする。



なんだ、トイレか。



目を閉じるとAちゃんが戻ってくる。



握りやすい場所に俺の手を置いたけど

Aちゃんから握られることは無かった。

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