太陽の当たる場所 5

SPARK 17 ページ41

テレビを見てると
玄関が開く音。

…ニカか。



前はドキッとしたのに
今は来たんだ、くらいの気持ち。



大丈夫。
いつも通りにすればいい。

友達のままならそのままだし
この前の子が彼女になったなら鍵返してって言われるだけだし。

ニカの好きにしてもらえばいい。



テレビを見てると
しばらくしてリビングに来たニカは

「…こんばんは」

何だか小声で。



「どうしたの？」

何かあったのかな。
聞いてみると

「え？」

ニカが驚いてて。



何をそんなに驚いてるんだろう。



「何かあった？」

改めて聞くと

「この前、心配して来てくれてたのに俺すごく態度悪かったから」

ニカが申し訳無さそうに言うけど。



もう私には過去の事だし
私が勝手にした事なんだからニカが気にすることはない。



「気にしてないよ」

「…でも、ごめん」



ニカが謝ってくるけど。



「大丈夫だって。ほら、ニカの好きな芸人さんの番組始まるよ」

「……うん」



ニカが遠慮がちに隣に座る。



番組が始まって少しする。



ニカが全然笑わない。

私は今日は特に面白くなかったから笑わなかったんだけど
ニカはいつも楽しそうにしてるのに
全く笑わなかった。



「面白くないの？」

しばらくして声をかけてみる。

「Aちゃんこそ笑わないじゃん」

ニカも無表情で返す。



「私は今のところ笑うポイントが無かったから」

「俺もだし」

「そっか」



そのまま見続けて
結局番組が終わるまでお互い全く笑わなかった。

そんな日もあるかな。



なんて思ったから

「私、そろそろ寝るね」

立ち上がったらニカが私の腕を掴む。



「…ごめん」

ニカが泣きそうな顔で私を見た。



謝られる心当たりがない私はキョトンとする。




「ものすごく傷つけたよね」

ニカが泣きそうな顔のまま言う。



傷ついた？

私が？



「そんな事ないよ」

もう普通の顔してるハズだけど。
でもニカはすごく辛そうな顔で

「じゃあ何でそんな顔してるの？」

聞いてくる。



そんな顔ってどんな顔をしてるのか
自分では分からなくて。

何もリアクション出来なかった。



ニカは

「そんな人形みたいなAちゃんじゃなくて前のAちゃんに戻ってよ」

って言ってくるけど。



前の私ってどんなだった？

もう分からなくて。



「私は私だよ？」

としか言えないでいると
ニカが本当に悲しそうな顔をした。



そんな顔をされても
私としてはどうしていいのか分からなかった。

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