太陽の当たる場所 3

Air 5 ページ45

久しぶりにニカと寝た朝。

目が覚めるとニカは既に居なくて
テーブルの上にはスクランブルエッグと野菜が乗ったお皿がある。



『パンは自分で焼いてね！』
ってメモとスマイルマーク。

ニカが作ってくれたんだ。



そしてウラにも何か書いてある。

『次に来る時はキノコ持ってくるね！』



……キノコ？



謎のメッセージが気になるけど
とりあえず仕事に行く。



出来る仕事が増えてからは
とにかく仕事が楽しい。

今日は作業の後で時間が余って
明日の大量納品の前にガレージの大掃除をすることに。



私は田原先輩と外の掃除を担当した。
地面に水と洗剤を掛けてデッキブラシで磨いていると

「最近楽しそうだな」

先輩が言う。



「そうですか？」

「うん、毎日楽しそうに見える」

「出来る事が増えたんで」



スキルアップは楽しい。
社長に教わったやり方で作業も早くなったし
何よりバイクに触れてるのが楽しくて仕方ない。



「プライベートも充実してるじゃん。ダイビングやるなんて知らなかったよ」

「最近始めたんです。友達に勧められて」

「へー！Aから友達の話って初めて聞くな」



田原先輩は何でか分からないけど嬉しそうに笑ってる。



「最近出来た友達なんで」

「へー」



しばらくそのまま作業してたけど
また少しして田原先輩が

「ダイビング、楽しいんだ」

聞いてくる。



楽しかった。
特にこの前八丈島で最後に潜った時。

ニカと潜った時。

ニカとずっとはしゃいでた時。



だから

「はいっ！」

自分でもびっくりする程いい返事をした。



田原先輩は驚いた顔をした後で
柔らかく笑う。



「ホントに好きなんだな」

「はい」

「俺は海とか怖いからさー」

「そうなんですね」



しばらくそんな話をしながら
掃除をしていた。



その日の夕方

「じゃあ忙しい明日に備えて今日は1杯行くか！」

なんて社長は上機嫌。



「A、いつもの店予約出来るか？」

「聞いてみます」



叔父さんに電話を掛けるとOKが出る。



いつものように田原先輩を迎えに行くのか。
さすがにためらうけど。



でも田原先輩は

「今日は飲まないから大丈夫」

私に言ってくれて安心する。



「…あからさまにホッとされると傷つくんですけど」

って小突かれたけど。



そしてお店に着いて田原先輩がバイクを停めるからと思って裏にバイクを停めに行くと
喫煙スペースに見覚えのある人影。



…北山さんが1人でタバコを吸っていた。

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