太陽の当たる場所 3

Fake。3 ページ5

休み明けの仕事は
修理が沢山あって。

目が回るほど仕事が忙しくて。



へとへとで帰ると玄関にニカの靴。



また来てるんだ。
いささか来すぎじゃない？



作業着を洗濯機に入れて
シャワーを浴びて洗濯機から作業着を取り出す。



ニカはリビングでビールでも飲んでるんだと思って

「ちょっとニカ？」

声を掛けながら入るとニカは居ない。



あれ？
靴はあるのに。

ってことは。



ルーフバルコニーに向かうとカーテンは閉まってけど少し隙間が開いてる。



カーテンを少し開けると
窓に映る自分を見ながらTシャツに短パンを着て
クロックスじゃなくスニーカーを履いたニカが踊ってる。



いつもとは違う真剣な顔。

イヤホンをしてて音は聞こえない。
何の曲なのか分からないけど
結構激しく踊ってる。

冬のコンサートなのかな。

それとも今度スペシャル番組に出るって言ってたからそっちなのかな。



ターンしたタイミングで汗が飛ぶ。

指の先まで意識した動き。


いつものニカともDVDのニカとも違う
初めて見る真剣な顔のニカ。



綺麗。



見とれてしばらく動けなかった。



曲が終わったのかニカが動きを止めてこっちに背を向けて肩で息を整えてる。
その背中も何だかすごく逞しく見える。



すごい。

圧巻だった。



ニカの事だから
見られてたら嫌だろうなと思って
まるで今来たみたいにあえて音を立てて窓を開けた。



「ただいまー」

「おかえりー！お邪魔してまーす」



ほら、振り返ったニカの顔はいつもの笑顔。

やっぱりきっと見られたくなかったよね。



「ごめんね、服干させて」

「うん、俺も後でコレ洗濯させてー」

「どーぞ」



干してる間はニカは踊らない。

やっぱ見られたくないんだろうな。



努力してるとことか見られたくないんだろうね。
だから練習もうちでするんだ。

ニカらしい。



「ご飯食べた？」

「うん、遅い時間に食べると太るから」



意地悪な顔をしてニカは言う。



ムッとして洗濯物を干してからリビングに戻ろうとしたら

「Aちゃんは太ってないからちゃんと食べなよ」

部屋に足を踏み入れた瞬間ニカが言う。




え？

振り返ったけどニカはもうこっちを見てなくて
窓に向かってポーズとかを確認してる。



「…はーい」

聞こえてるか分からないけど返事をしたら

「ん」

ニカが小さく返事する。



変なところで年上ぶるニカ。



…なんか変な感じ。

でも、嫌じゃない。



けど夕飯の量は少し減らした。

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