太陽の当たる場所 3

Fake。17 ページ33

ニカは車で迎えに来てくれていた。



鍵を開けて車からタオルを取り出すと

「はい」

って渡してくる。



「…ありがとう」

「ん」



タオルを受け取ったら
繋いでいた手が解かれる。



ニカはそのまま先生に電話を掛けていて
私はそのニカの優しい声をぼんやりと聞いてた。



電話を切ったニカは私を見て笑う。

「何でそんなにぼーっとしてるの？」

私に近づいてタオルで私の髪を拭く。



「ほら、風邪引くよ？」

わしゃわしゃとニカに乱暴に拭かれる。

「痛い」

「ちゃんと拭かないんだもん」

抗議してもニカは笑って私の頭を拭く。



「はい、これ座るとこに引いて？」

ニカが大きなビニール袋を渡してくる。



後ろの席に引こうとしたら

「いいよ、近いし前に座りなよ」

って私の手から取って助手席に引き出す。



ニカは私がぼんやりしてるのを
ただ疲れてるか何かと勘違いしてるのか
テキパキと私の足や体も拭きだして

「ほら、帰るよー」

自分はザッと拭いてどんどん車に乗り込む。



違うって。

さっきのキスが何か分からないから
頭がついていけなくてこんなに動揺してるんだけど。



ニカにとって
こんなキスって友達でもするの？

こんなにフワフワするキス
初めてだったんだけど。



「置いてくよー」

ってニカはエンジンをかけだした。



渋々車に乗るとニカは

「雨で濡れててもシートベルトはしてね」

って言うとギアをドライブに入れたから
シートベルトをするとゆっくり車が動き出した。



……ニカはほんとに何ともないんだ。

キスなんてただの挨拶なんだね。



そう思ったら今度は別の苦しみが現れる。



ニカは恋人じゃなくても
好きでもなんでもない子と
こんな事出来るんだ。



でもそれがつらいって
私はニカの事…。



「Aちゃん」

ニカが声を掛けてくる。



「夕飯食べ終わったらドライブ行こ」

「ドライブ？」

「うん。めっちゃキレイなとこ」



ニッて笑うニカは
やっぱり私のことを全く意識してなくて。



ニカは私の事はなんとも思ってなくて
彼女を作らない＝キスくらい友達でもする
って事だって分かった。



そしたら何だか色々腑に落ちた。

あんなに近くで寝るのも普通だし
キスだって大したことないんだ。

だからニカはこんなに平然としていられるんだね。



モヤモヤしてたのが勿体ないし
ニカに勝手に腹が立ったから
大きなため息をついたら

「え！なに急にっ」

勝手に驚いてるニカにすらイラッとした。

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