拾ってください。4

愛をこめて 1 ページ49

「全国ツアー？」

「そう」

「私もですか？」

「うん、もちろん」



正直、キョトンとする事しかできない。

今日は助っ人バンドさんとの打ち合わせ。

大きな会議室でやるって言うから
何かと思ったら
全国ツアーの打ち合わせだって言う。

しかも知らなかったのは私だけ。



「メンバー全員で俳優業少し休んでミュージシャンしてみたいって話になってね」

リーダーが言う。



最近知ったけど
皆さん本当に有名な俳優さんで賞とかも撮ってるし
主役や2番手ですごく人気もあった。

そんな人達が俳優休んでいいの？
それを心配しちゃうと

「これを最後に俺たちしばらくバンドできないくらい大きな仕事それぞれ入ってるから、一時活動休止みたくなるわけ」

と言われると
今度は逆に大仕事ってことだ。



「石井さんには許可とってるよ」

事務所のスタッフさんで
結局ドラマからずっと私について下さってる西村さんが隣で小声で言う。



本人より先に先生とか
おかしくない？




「スケジュールはtamaちゃんが先生をやる日は極力外してるよ」

ニッコリ笑うリーダーは
私に拒否権を与えない感じ。



先に根回しとかずるいよ。



「でも私、助っ人ですけど…」

「パーカッションとギターの助っ人も参加するよ」



言われて2人に目を向けると
2人とも苦笑い。

きっと2人は既に説得されてて
後は私なんだろう。

そして私がダメって言わないように
先に先生に話をしておいたんだろうなー。



男の人ばっかりだから
嫌だな。

…なんて言ってられないか。



「ただ、今回は長い仕事だからものすごくギャラが高いよ」

そう言って西村さんが見せてくれた明細に書かれた数字が
今まで見た事がない数字。



「……え？」



こんなにいただけるの！？

しかも前金でめちゃくちゃ貰えて
終わってからも出るとか！！



そしてよぎったのがもうすぐ来る裕太の誕生日。



…これは行くしかない。

バレンタインでは買えないって思ったものも買えちゃう。
しかもすごくいいやつ。



でもお金見せられてやるとか
なんか意地汚い感じで。



返事を出来ずにいると

「今の俺たちの音楽にはtamaちゃんが必要なの。お願いします！」

リーダーと

「「「お願いします！」」」

メンバーに頭を下げられちゃうと。



「こちらこそ、色々勉強させて下さい」

としか言えなくて。




よぎってるのは裕太の顔。

バーでの仕事でも反対したのに
泊まりの仕事を許してくれるかな。

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