太陽の当たる場所

夢の途中 21 side 2 ページ42

仕事の帰り。

マネージャーの小林ちゃんと俺の2人になった。



「帰りますよ」



小林ちゃんがエンジンをかける。

Aちゃんち行きたいんだけどもう遅いんだよね。

ただここからならすごく近い。



ワガママ言ってみていいかな。



「ねー小林ちゃん」

「はい」

「違うとこに送って明日迎えに来て欲しいんだけど」

俺が地名を言うと

「…え？」

少しびっくりしてる。



「どしたの？」

「今日自分そっちに用事あるんです。だからめちゃくちゃ助かりますけど」

「え！そーなの？」

「はい」



それなら話は早い。



「じゃあ頼んでいい？」

「もちろん」



嬉しそうな小林ちゃん。



これはもしかして…



「彼女？」

「え！？」

「ははーん、そうなんだぁ」

「いえ！そのまだ違いますっ！！」

「へぇー『まだ』ねぇ…」

「…あっ！！」



わかりやすく動揺してる小林ちゃんが
面白い。



「みんなにはナイショで」

「もちろんっ！でもうまくいったら教えてね？」

「…はい」



いいなぁ。

俺の場合、Aちゃんは友達だしなー。



……いや友達でいいんだけどさ。



そんな気持ちで行ったからかな。

Aちゃんちに新曲のフリ練習に来ること言って
ダメ元で『鍵貸して？』なんて言ってみたりした。



そしたら夕飯を条件にあっさり貸してくれたし。



バイクの教習行くって言ったら
スキューバに行ってくれるって言うし。

だから仲良くなれてるんだと思ったら
住所入った封筒受け取ってくれないし。



何でそんな頑なに俺の住所載ってる封筒受け取ってくんないんだろう？

俺も俺で何でそんなに受け取らせたいんだ？



「で？今日直接こっち来たんだもんね。明日何時？」



Aちゃんは寝る準備をするのか俺のコップと自分のコップを手にして立ち上がった。



確かにもう1時だからそろそろ寝ないと。



「んーとね、ここを9時だけど資料読みたいから朝起きるのは7時かな」



言いながら資料を探す。



探す。



………ん？



「…………ない」

「え？」

「資料。ない」



ヤバい。



「どーしよ」



打ち合わせもあるから資料読んでおきたいし。
読まないで行くのはマズい。



でももう電車ないし。

明日帰るならここを始発かな。

小林ちゃんには明日朝連絡してうちに行くって言っておけばいいとして……



考えてたらチャリッて鍵の音。



見上げたらバイクの鍵とヘルメットを持って

「…送ってくよ？」

Aちゃんが言う。

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