すぐ近くにいる another story 5

妹。F -side you- 24 ページ46

たい兄についてきた女の人は
私を見ると慌てて

「あー、藤ヶ谷くんお金ありがとう！借りてくね」

って帰っていく。



何で？



キョトンとしちゃう私に
たい兄はホッとした顔をしてる。



それも何で？

彼女じゃないの？
追わなくていいの？



不思議に思ったのは少しの間。

たい兄はため息をついて怖い顔で私を見る。



「どうしたの？」



たい兄の顔はものすごく怒ってる。

そりゃそうだよ。
こんな時間に1人でここに居るんだし。



「………」

何も言わないでいると

「…兄貴と母さんは？」

さらに聞いてくるたい兄。



1人でここに来たって言ったら
たい兄はなんて言うかな。



どうしよう、と思ってたら
たい兄の携帯が鳴ってる。



たい兄はポケットから携帯を出して

「もしもし？」

電話に出ると

『もしもし太輔？Aそっち行ってない？』

周りが静かだから電話の向こうのみつ兄の声が聞こえる。



げ。

みつ兄だ。



思わず小さくなるとたい兄が私を見る。



「………え？」



たい兄が驚いた顔。

みつ兄に黙ってここに居る事を悟ったのか
たい兄の顔がみるみる怖い顔になる。



怒られる。

たい兄にも、みつ兄にも。



どこかで覚悟してたけど
いざ現実になると怖くて。

しかもたい兄はやっと出来た彼女との仲を
邪魔されてるんだ。

どんだけ怒られるのかな。
たい兄に嫌われるかな。

色んな感情でぐちゃぐちゃになって
涙が溢れる。



たい兄は私を見下ろしたまま

「いるよ、ここに」

冷たく答える。



やっぱり怒ってる。

そりゃそうだよね。
せっかくのチャンスを邪魔されてるんだもん。



みつ兄が何かを言ってるみたいだけど
聞こえない。



電話を切ったたい兄は

「Aおいで」

聞いた事がないすごく怒った声で言う。



無理。

怖いよ。



首を振るとたい兄の眉間にシワが寄る。

多分言う事を聞かない私にさらにムッとしたんだろう。



そんなたい兄にどうやらメールが来たみたい。



誰からなのかな。

彼女からかな。



たい兄は大きなため息をつく。



怒られる。
怖くてビクッてなると

「ん、もう入って寝よ」

たい兄が笑って頭をいつもみたいにポンってする。



怒ってないの？

見上げると困った顔をしてて
でも目の奥も優しくて怒ってないのが分かる。



ホッとして笑っちゃうと
たい兄も優しく笑う。



私を立たせるように手を取って
久しぶりに繋いだ手に私はキュンってなるけど。



……たい兄は違うよね。

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