すぐ近くにいる another story 5

妹。F -side you- 23 ページ45

みつ兄が何か言ってるけど
何も聞かずに部屋に逃げ込む。



無理。

気持ちの整理なんて出来ない。



だってたい兄と私の血が繋がってないなら…



浮かんだ気持ちに

『だって血の繋がり無くたって、太輔はお前の兄貴だしお前は太輔の妹だろ？』

蓋をするように繰り返されるみつ兄の言葉。



確かにたい兄は
私に何かしてきたりしてない。

あんなにそばに居て
甘い言葉は掛けてくれても
何もしてこない。



それはたい兄にとって私がただの妹だから。



……そうなの？

そうなの？たい兄。



わからない。



わからないなら
たい兄に確かめに行こう。



決意するとおばあちゃんから貰ってそのままにしてたお年玉を開けてお財布に入れる。



まだ今なら大阪に行く新幹線もある。

でも帰って来れないだろうから。
むしろ明日からゴールデンウィークでおやすみだから帰って来なくていいし。



…それなら休みの間向こうに居ればいいや。



そのためにはたい兄に怒られないように
宿題も持って行こう。

そして見守り機能がついてたら嫌だから
何処にいるか分からないようにするために携帯は置いておく。



ママとみつ兄に見つからないように
そーーっとリビングを横切って玄関に行くと
走りやすい靴を履いて外に出る。

玄関を出たらダッシュで走った。

駅まで走って新幹線の駅までの切符を買って
電車に乗り込むと息を整える。

周りの人が不思議そうに見てるけどそんなの知らない。



記憶を頼りにたい兄のアパートに行くと
たい兄は家に居なくて。



部屋の前で座り込む。

時計も携帯も持ってないから
今何時なのか分からないし。

でも家を出た時間と着くはずの時間を考えたら
もう夜中のはず。



もしかして今日は帰って来ないのかな。



ドアの前で座り込む。



朝まで帰って来ないなら
仕方ないから帰ろう。



そう思って待ってると
だいぶ経った頃にたい兄の声と誰かの声。

「A？」

たい兄の声に顔を上げると
たい兄とその後ろに女の人。



しかも大人びててすごく綺麗な人だった。



……そっか。

やっぱりたい兄は
私以外の人といつかこうなるんだろうな。

私はたい兄の妹でしかない。



そりゃそうだよ。

家にいたら私がずっと部屋にいるから
たい兄は彼女作れなかったよね。

一人暮らしすれば
たい兄は彼女を作って好きに過ごせる。



たい兄は何で大阪に来たのか
ずっと不思議だった。


でもやっと分かった。

私と離れて1人になる為だったんだ。

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