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妹。F 29 ページ21

何だかしっくり来ないまま
兄貴とAの寮へ向かう。

寮は実家からそんなに遠くなくて
聞くと兄貴が春から一人暮らしするとこと
実家の間にあるらしい。



最寄り駅から寮に向かう途中
兄貴は話を色々振ってくれるけど
俺は上の空で。



「こぉーら!太輔っ!」

兄貴が怒って俺の頬を摘む。



「何がそんなに不満だよっ。苗字変わっても関係ねーだろ?」



兄貴から見たらそうかもしれない。

でも俺にとったら違うんだよ。



苗字が違えば
出会いが違えば



俺とAは恋愛だって結婚だって出来るのに。



苗字とか血の繋がりとか俺にとっては大きいんだよ。



「変わるよ」

「何が」

「だって俺と兄貴は…」



血が繋がってないじゃん
だから同じ苗字なのが唯一の繋がりだろ?

言いかけたら兄貴がものすごく悲しそうな顔をする。



そんな顔されたら言えない。



「………ごめん」

先に謝っちゃうと兄貴が笑う。



「いや、俺がゴメン。太輔の言いたいこと分かってんだけど言わせよーとしちゃったもんな」



兄貴は俺の頭を撫でる。



「…子供じゃないんだけど」

「あはは、なんか嬉しくて。怒るとしてもそんな寂しがってもらえると思わなかったから」

「寂しくなんか……」



ないって言いきれない。

結局俺は兄貴が兄貴であり父親みたいなもんだったから。



「一度しか言わねーけど」

兄貴はそう前置きして



「太輔が弟で良かった。俺みたいな奴のことそんなに好きでいてくれてありがとな」



兄貴が真剣に言うから何だか泣きそうになった。



だから

「別に好きな訳じゃないし」

言ってそっぽ向くことしか出来なくて。



「あははは、やっぱり俺お前好きだわー」

兄貴も照れ隠しで俺の頭をぐしゃぐしゃにするから

「やめてよ!ぐちゃぐちゃになる!」

怒っても兄貴はやめてくれない。



そうこうしてたらAの寮に着いて
入口でAと母さんが待ってる。



「たい兄ー!めっちゃ嬉しいんだけど!」

Aが俺に抱きついてくる。



「うわっ!何?」

「オーブントースター!譲ってくれるの?」

「あれだけ言われてダメとか言える?」

「もー!たい兄大好き!!」



Aの言う『好き』は
兄貴が言う『好き』と同じで俺のとは違うから。



「はいはい、壊さないでよ?」

「はーい」



嬉しそうなAに無理矢理
微笑むことしか出来なくて。



Aの無邪気な距離感が
今はものすごく辛い。

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shizu(プロフ) - Haruさん» 王道すぎる話なのですが。ガヤさんがお兄ちゃんとか最高。ミツ担な私はとにかくミツは彼氏枠でお兄ちゃんでは辛い(笑) (2020年4月11日 20時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
Haru(プロフ) - わーん、また切なくてでもなんだかこの兄弟関係がほのぼのしていい短編!たいぴ見たいなお兄ちゃんがいたらきっと私もひっついて離れないです(笑) (2020年4月9日 19時) (レス) id: a682c15f64 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2020年4月9日 19時

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