サイボーグな彼女 13

ふたりの夢 12 ki ページ18

「はぁ…」

ため息をつくソイツ。



新聞で思いきり報じられた後。

俳優と飲みに行くと
お祝いの予定が明らかにテンションが低い。



「そりゃまぁお前のファンからしたらそーなるだろ」

「…だよなー」



反応は当然本人の耳にも届く。

『おめでとう』の声は明らかに少なかったらしい。



「しかも順番ちげーし、お前この前付き合ったっつってんのにもう妊娠ってどーゆーことだよっ」

「それはー…まぁ…あははー」

「なんなら俺もファンと同じ心境だわっ」

「それはホント悪かったよ。しかもお前と噂になってたしさ」

「ホントにな！なんならその子の父親実は俺説流れてっから！！」

「あはははは、みたいだな」



やっとソイツが笑う。

良かった。



「起きたことは仕方ないっつーとアレだけど。早かれ遅かれ子供欲しかったし、しかも好きな人との子だしな」

ソイツは幸せそーに笑う。



こんな顔を見るのが初めてだったから
何だかいいな、なんて思った。



「守ってくよ、アイツもアイツとの子も」


すげー穏やかな顔で言う。



こうなったことに後悔もないし
本当は受け入れてる顔。

すげーいい顔だった。

守るべきものがあるっていいな。



「ひゅー」

俺のだいぶ昔なリアクションに

「古っ」

ソイツが楽しそうに笑って
さらに穏やかな雰囲気になって。



「俳優としてすげーんだから、ちゃんとやってるお前見たらみんな見直してくれるよ」

「そうだな。それは自信ある」

なんて言葉で締めてあとはいつもの雰囲気で飲んだ。



でもどこかソイツに充実感が出てて
なんかすごく良かった。



なんか無性にAに会いたくなって
コンビニでアイスを買ってAんちに合鍵で入る。



リビングに行くと
もう0時近いのにタブレットのキーボードを叩く音。

俺が来たのには気づいてないみたい。



「ただいまー」

「あ、おかえりなさい」



声をかけるとようやくAが顔を上げる。



気づいたらAんちに来るときって
「ただいま」や「おかえり」の挨拶が普通になってる。



「へへへ、ただいま」

なんだか嬉しくてニヤけると

「…いいことでもあったの？」

素の顔で聞いてくるから。



「今日さー、アイツと飲んできたんだ」

って報告すると

「もしかしてアイドルの旦那さんですか？」

言わなくても気づいてくれるのが嬉しい。



それに浮かれてて
Aが何でこんな遅くまで仕事してるかなんて
この時の俺は全く気にも止めていなかった。

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