サイボーグな彼女 12

ふたりの夢 3 ki-2 ページ50

シャワーを浴びて
時計を見るともう4時。



一応エゴサしてみると

『北山宏光がまたあの子と飲んでる』

『これやったな』

的な書き込みが見つかる。



あーもう。
俺じゃねーんだよ。

つーかまぁ無理か。
1時間俺の方が長く居る訳だし。



でも俺が言う訳にいかないし。

その子がまだアイドルでいる間は
俺が言うのはおかしい。



それにしてもスゴいな。

あの子はそんなにアッサリ今の立場捨てられるんだ。



俺には絶対できない。

キスマイの立場捨てる事なんて。



…でも。

じゃあ俺とあの子の何が違うわけ？



俺だってあの子と同じで
こっそりAと付き合ってんじゃん。


つーか、付き合ってるってゆーのか？
最近えっちしかしてねーし。



俺、Aに相当酷いことしてねーか？



なんか寝付けなくて起きた翌朝。



今日は昼からだしAんちに朝メシ食いに行こうとして
合鍵で部屋に入ったけどAいねーし。



仕方ないからリビングでゴロゴロして待つけど
全然帰って来ない。



私用スマホに電話を掛けたけど
ブブブッて音はキッチンから聞こえる。



キッチンのカウンターで震えてるスマホ。



「…忘れてんのかよっ」



思わず独り言を言ってため息をつくと
冷蔵庫を開けて適当に朝メシを食う。



…話、したかったな。



手紙で

『朝ごはん適当に食った。
ごちそーさん。
今日の夜、ちょっと話そ。 宏光』

書いて仕事の支度あるから一度帰る。



部屋を出てエントランスに着くと
Aがちょうど帰ってきたところで。


俺に気づくとびっくりした顔をしてる。



「はよ」

「…おはようございます」



少し気まずそうなA。



「ごめん、朝メシ勝手に食った」

周りに人がいないのを確認して聞こえるように近づいて小声で言うと
Aは俺と距離を取ったまま

「いえ、どうぞ」

手にしていたお店の袋を俺に見えないように隠して頭を下げる。



……何持ってんの？



覗き込もうとすると

「じゃあ、後で迎えに行きます」

袋を隠してAは俺から逃げようとするから
慌ててAの腕を掴んで

「…今日夜寄っていい？」

それも小声で聞くとAは小さく首を振って

「今日はごめんなさい、先約があります」

申し訳なさそうに頭を下げてA はエレベーターに消える。



いつもは用事があっても部屋で待たせてくれたのに。



付き合ってから初めてだった。
断られたのが。



俺はエントランスで
呆然と立ち尽くした。

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