サイボーグな彼女 12

好きすぎるから 20-1 ki ページ26

撮影の途中
炭谷さんは戻ってきた。

顔色も戻ってるから多分大丈夫なんだろう。



隣でAが能面みたいな無感情の顔をしてる。

これAは相当ムカついてんな。



撮影が終わって控え室に戻る時

「お疲れ様です」

俺のところに近寄るAは炭谷さんを一切見ない。



「着替えて移動になります。時間には余裕ありますけど。迎えの時間早めますか？」

「んー、資料見る時間欲しいし久しぶりの猫スーツで頭が重いから少し休憩してーな」

猫の頭の部分を脱ぎながら言うと

「承知しました。ではひとまず控え室に」

Aは頭の部分を俺から受け取りながら答える。



来る時はAが手を引いてくれたけど
戻る時は頭が軽くなってるしAも猫スーツの頭の部分を持ってるから何もしてくれない。

まぁ仕方ねーけど。



そして炭谷さんはそんなAの後ろから無言でついてくる。



控え室に入ると

「着替え手伝う？」

「結構です、座っててください」

声をかけてくれる炭谷さんにAは炭谷さんを見ずに答える。



…さすがに冷たくねーか？

でもAの何も言わせない雰囲気に俺も圧倒されて猫スーツも脱がされるがまま脱ぐ。



「髪のセットは自分でしますか？」

Aが言う。



「え？出来んの？」

「簡単な髪型とメイクはスタイリストさんに教わってきたんですけど」

「マジか」



俺たちのやり取りを黙って見てた炭谷さんは

「じゃあそろそろ俺行くんで」

「お疲れ様です。終わり次第連絡します」

Aに声を掛けるけどAはやっぱり炭谷さんを見ないで答える。



思わず炭谷さんを見ちゃうと
炭谷さんは少し寂しそうに笑って「また後で」って言うと部屋を出ていく。



Aは猫スーツを脱がすために背中に回ったから
いまどんな顔をしてるか分からない。

「…なぁ」

「はい」

「冷たくね？」

「…かもしれないですけど」



スーツの最後の部分を外してくれながらAは

「自分で防げる体調管理をしない人に何も言えないですから」

すごく素っ気ない言い方。



これはさすがに

「何かあった？」

「特に」

間髪入れずに答えるA。



逆に何かあったんじゃねーの？ってくらい冷たい口調。



「もし仮に何かあったとしても炭谷さんが何を考えてるのか私にはさっぱり分かりません」

なんてAも前はちょいちょい『涼さん』って言ってたのに『炭谷さん』って言ってて。



さすがにおかしいっつーの。

逆に気になっちゃう。

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