すぐ近くにいる another story 4

秘めた想い T -side T- 44 ページ36

Aは本当は
俺の事を好きだったの？

宮田との間に割り込んだ時に
俺が宮田とAを妬いたと思ったからあんな顔をしたの？



でもだとしたら何で喧嘩口調で
いまこんなに泣きそうなわけ？



頭が混乱したままな俺に

「また明日からよろしくね。お疲れ様でしたっ」

畳み掛けるようにAは言うとそのまま立ち去ろうとする。



立ち去る時に
Aが何かを呟いていたけど
人混みでごった返してる新幹線のホームだと何を言ってるかまでは聞こえなくて。

「待って！」

慌てて引き止めるけど
人とぶつかってその人が荷物をばらまいちゃって。



それを拾ってる間にAの姿は見えなくなっていた。



北山さんはどこまで迎えに来てくれてるんだろう？

探しながらAに電話を掛けるけど繋がらない。




何度も電話を掛けながらやみくもに走り回るけど
駅の人混みの中からAは見つけられなくて。



今から追いつくのは難しいだろう。



息が切れてきたから立ち止まって
深呼吸をして考える。



Aが本気でさっき言ってくれたとして。

北山さんが迎えに来てくれたからと言って
Aの性格上そんなにすぐに北山さんのところに行かないハズ。



でも多分これが最後のチャンスだ。



俺はそのまま電車を乗り継いでAの家に向かう。



チャイムを鳴らすけどAは帰って来ていなかった。



…北山さんちに行ったとかかな。
だとしたら手遅れになってるかな。



そう言えばAは一昨日の夜宮田に言ってた。



『ずっと変わらないなんて、難しいよ』って。



もしかしたらAは北山さんの事が気になっていて
俺の事が好きって気持ちも変わりかけていて。

だから俺にそう言ったのかもしれない。




逆に結局俺は何も変わっていない。



学んだハズだった。
あのどうしようもない新人がうちの部署に来た時に。



自分が軽い気持ちで言ったことが
相手にはどう伝わるのか。

その受け取り方でどうなるのか。
全く予想つかないことも起こることがあることも。



俺がAに俺をどう思ってるのか聞いただけだったのに
その聞き方でAが腹を立てて
まるで喧嘩するみたいに俺に気持ちをぶつけてきて。

何でそうなったかも分からずに勝手に俺は腹を立てて
Aにあんな顔をさせて。




一体俺は何をしているんだろう？






どのくらい時間が経ったのか。

エレベーターが着く音と足音がして止まる。




顔をあげたら驚いた顔のAが居た。

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