すぐ近くにいる another story 4

秘めた想い T -side T- 27 ページ19

そして異動発表の、少し前。
会議室に集められた俺たち。

そろそろ異動かなーなんて言ってるA。



知ってる俺は

「は？どの部署に行っても呼ぶし」

なんてうっかり言っちゃって
あ、やべ、口滑ったって気づいたけど
まぁもう分かっちゃうわけだし。



仕方ないよな、なんて思って
配られた資料に目を通した瞬間。



………え？



思わず固まる。




Aの異動が無くなってて
代わりに俺とプロジェクトを進めていたメンバーが開発部に異動になっていて
宮田が遠くに異動になっていた。



どういうこと？



呆然としてる俺に何事もなかったかのように
打ち合わせが始まる。

途中話を振られたけど
なんて聞かれたかもなんて答えたかも覚えていない。



「じゃあ資料は回収します。ここで知った結果はこの場限りでお願い致します」



部長がそう言って俺を見た時に
何か言いたそうにしてるのに気づく。



Aと飲む約束だけして部長のところに行くと

「色々あってね、変更になった」

「色々ですか？」

「また後日発表するけどAの異動は取り消し。でも結果はこれで良かっただろ？」



部長はそう言うけど。

Aがいても宮田いないし
宮田が居なくて俺大丈夫？



案の定その日の記憶は無い。

気づいたらベッドで寝てて枕元には水。



Aだな。



手紙もあった。

『お疲れ様。8時になっても連絡無かったら休みにしとくから無理しないで今日1日くらい休んでね。』


見渡すとスーツはちゃんと掛けてくれてて
カバンは定位置に置かれててスマホも充電してくれてる。



俺のルーティン知ってるとはいえどんたけ良い奴だよA。



次の日会社に行くとAにお礼を言って仕事に取り掛かる。

でもすぐに手が止まりかける。

名刺の発注、勤務システムの登録…
まさか宮田の異動を手続きする仕事をするなんて。



昼休み。

「たーまっ！」

無邪気に話し掛けてくる宮田に腹パンする。



「うおっ」

「ふんっ」



でも宮田は特に何も言わなくて
きっといつもの八つ当たりだなって思われてると思う。



「今週末さー、半年前に皆で見たやつの続編買ったから見よーよ！」

「…あぁ」

「また半年後に多分出るからさ！また皆で見ようね！」

「ははは、そうだな」



宮田はニコニコしてるけど返す俺は笑えていたかな。




多分俺は笑えていない。





半年後、お前は俺の家には来れないんだよ。

その現実が受け止められなかった。

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