すぐ近くにいる another story 4

妹。F 2 ページ44

「まったくー」

「ありがと、みつ兄」


学校に向かう途中。
Aは母さんが持たせてくれたトーストを頬張る。

食べてる時のほっぺの膨らみ具合が
さっき俺の隣でトースト食べてた時の兄貴と同じ顔。



パンを飲み込みきれなくて苦しそうにしてるから

「ほらA」

「えー！たい兄ありがとうー！」

持ってきたミルクティを渡す。



「太輔！お前Aを甘やかし過ぎだぞ！」

「たい兄はみつ兄と違って優しいんだもーん」

兄貴が文句を言ってAはニコニコしてる。



「ね、ね、たい兄。髪ポニーテールにして」

「…そう言うと思ってたよ」

母さんから借りたブラシとピンを見せると

「わー！さすがたい兄！」

パンとミルクティを頬張りながら
シートベルトを少し引っ張って俺に背を向ける。



「たいすけーーー！」

「いや、俺は兄貴に比べたら絶対甘くないよ」

「甘いわ！メイプルシロップより甘いわ！！」



兄貴は俺をミラー越しに睨んで怒ってるけど。



今日もダメって言いながら結局Aを送ってるし
多分夕飯でAが兄貴に譲るって言ってる夕飯も
Aが「美味しー」って一言言ったら 「おー！なら俺の分も食え」って言うのは兄貴なのに。



「みつ兄、たい兄を怒らないでよー」

「ふざけんな！元はと言えばお前だぞA！！」



兄貴は怒ってるけどもう笑っちゃってて。



結局、俺も兄貴もAに甘い。



Aの髪をとかしてると

「たい兄がこの前やってくれた編み込み、皆に褒められたよー」

ニコニコしながら言うから

「あれはいつもより15分早起きしないと出来ないからね」

「……休みの日にやって」

俺が返すと早起きの自信がないのか小声になってる。



「いつまでも太輔にやってもらってないで髪ぐらい自分でやれ！」

「いいじゃん！たい兄がやった方が上手なんだもんっ」



また兄貴とAの言い合いが始まって。



「いいよ、兄貴。Aがやるとぐちゃぐちゃになるしみっともないから」

「それもそーか」

俺と兄貴が言うと

「お兄ちゃんたちひどい！！！」

「「あははは」」

Aが怒って俺と兄貴が笑う。


「いってきまーす」

学校に着くと元気に降りるA。



「こらA！スカートの丈っ！」

兄貴の言葉を無視して短いスカートを翻してAがドアを閉める。



「兄貴ありがとう」

「ん」

俺も降りると走り出す車。



見た目平和な朝の光景。





でもこの3人の中で

俺にだけ血の繋がりはない。

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