すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T -side T- 6 ページ48

営業部の飲み会の帰り。

Aが帰るって言うから
俺も帰ることにした。

正直そんなにお金もないし
あとは営業部で盛り上がってくれりゃいーだろ。



飲み会は俺の家の最寄り駅だったから
Aを駅まで送ってると異様に人が多い。



「…なんか人多くない？」

「ねぇ」

タクシー乗り場は長蛇の列だし
みんなスマホで電話したり調べたりしてる。



「「まさか」」


俺とAもスマホを取り出して路線情報を見る。



「あー、ダメだ。止まったね」

「マジで」



停電って出てるからいつ動くか全くわかんない。

飲んで無ければ車で送ることも出来るけど
飲んでるしなー。



「どうすんの？」

聞いてみると

「んー、明日休みだし漫喫でも行くよ」

なんて呑気な回答。



女の子でしょうが。



てゆーかさ。

「彼氏さんとか迎えに来ないの？」

「そんな人いません」

「そうなの？それは失礼」

まぁいたら金曜日のこの時間に電車で帰るってなんないかな。



少しからかったら鞄で殴られちゃった。



さすがに漫画喫茶とか心配だし
下手したらこの子野宿とかしかねない。

…まぁAならいいかな。



「…うち泊まる？」

「へ？」

「俺も彼女さんいないから泊めても問題ないし」



俺の提案にすごく間抜けな顔してる。
でも少しして

「いやいやいや、ダメでしょう」

なんて言ってる様子見る限り
タクシーで帰ろうとするつもりすら無さそうなのも分かる。



「なんで？別に良くない？ホントは給料前でお金ないから三次会も行けなかったんじゃないの？」

そう言うと図星、って顔に書いてある。



あははは、やっぱりそうだったんだ。



「泊まってっちゃえば？まぁ少しして動くってなったらそこから帰ってもいいんだし」

「そりゃそうなら助かるけど…」

「ん、じゃあ決まりー」

って俺が歩き出すとついてくるA。



「ここ」

マンションの前で指さすと

「へー！駅近いしめっちゃ便利だね」

って言ってから目線を下に落とす。



「あ」



コンビニ寄るって言って駅まで送ったのに
下がコンビニなのがバレた。



「…玉森くん」

「なに」

「ありがとう」

「何が？」

「もう何だかいろいろ」



恥ずかしくて返事が冷たくなる俺に
Aは入社試験の時に見せてくれた笑顔を俺に見せた。



あ、この顔やっぱり好き。



「コンビニ寄らなくていいの？」

「…いい」

「ふふふ、やっぱり優しいね玉森くん」



ぶっきらぼうな俺にAが笑ってる。

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