すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 31 ページ34

宏光先輩との電話が終わって
何が何やらな状態の私。

しばらく放心状態だったけど
玉森くんがどうなったか気になって戻ると
着替えもしないでベッドの上で爆睡していた。



「玉森くん！スーツがしわになるよ！」

声をかけても無反応。



「玉森くんってば」

揺すってみたら

「んーー」

唸ってから手を伸ばして私を引き寄せる。



「わっ！」

バランスを崩して玉森くんの腕の中に収まると

「Aも寝よ」

玉森くんは掠れる声でそう言って私の頭をポンポンする。



「ちょっと！玉森くんっ！」

「いいじゃん、A抱き心地いいんだもん」

離れようとしても抱きしめられて動けない。
耳元で名前で呼ばれて
恥ずかしくて嬉しくて泣きそうだけど



玉森くんは多分明日には忘れてるだろうな。



「あーいい匂い」

「何がっ！？」

「Aの香り大好きなのー」

言いながらギュッて抱きしめてくるからもう限界。



無理！

好きな人に名前で呼ばれて抱き締められるとか！！
無理過ぎる！！
しかも絶対無意識だし！！



「玉森くん！離してっ！」

「やーだーー」

「やだじゃないっ！私がやだ！」



そう言っても全然離してくれなくて。

そのうち玉森くんの寝息が一定になったから
力が抜けてきたタイミングで離れる。



玉森くんのバカ。
私のこと何とも思ってないのに。



私はただの同僚なのに。

玉森くんは宮田くんのことが一番好きなのに。



そう思ったら涙が止まらなくなって
大泣きした。



それがバレたくなかったからシャワーを借りてシャワーで大泣きしてから
落ち着いたらソファで寝る。



次に気付いた時にもう外は明るくて。

玉森くんを見に行くとちゃんと着替えて寝てたから
昨日の名前呼びと抱き締められたのを思い出したらどんな顔していいのか分からなくなって
起こさないようにチャーハンだけ作って帰った。



お昼過ぎに玉森くんから電話が来る。

『もー！先に帰ることなくない？起こしてよー！送ったのにっ』

なんて怒ってるけど。



怒りたいのはこっちだし
何だかいつも通り過ぎて拍子抜けした。



やっぱり覚えてないんだな。



「二日酔い大丈夫？」

『うん。Aが作ってくれたチャーハンも残さず食べたよ。ありがと』



電話越しのさりげない名前呼びに心臓が跳ねる。

名前呼びしたのは覚えてるのかな。



「昨日のこと覚えてるの？」

『んー、ところどころ』

「…そっか」



どこまで覚えてる？なんて聞く勇気は無かった。

秘めた想い T 32→←秘めた想い T 30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す