すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 11 ページ14

そんなある日。

「これ、何回も教えただろ？」

玉森くんが静かに新入社員の子たちに怒ってる。



ゴールデンウィーク明け。

一部の新入社員あるあるだけど
頭が入社前になって戻ってきた。



「でも分からないんですもん。ねぇ」

「ねぇ」



なんて2人も悪びれてないからタチが悪い。



「こんなのAだって出来たぞ」

なんて私を引き合いに出すけど。



待って？

それって私もレベル低いって言いたいの？



「それは玉森さんがAさんにだけ優しいからですよ」

なんて斜め上を行く返事をすると隣の子も頷く。



ちょっと待って？

それはあなたたち私に失礼だし
玉森くんが仲良くしてるのと仕事出来る出来ない関係なくない？




昼休み。

早速その不満を玉森くんにぶつける。



「ねえ、さっきのどういうこと？」

「は？」

「私でも出来るって言い方、まるであの2人と私って同レベルなの？」

「誰もそんなこと言ってねーだろ」

「言ってたよ」



私たちは言い合いになるけど
こんな時に限って宮田くんがいない。



でも玉森くんから見てそう見えたっていうのはものすごくショックだった。



「…玉森くんは何でも出来るから私の気持ちなんて分からないよ」

「そうだな、Aの気持ちなんて分からないね」



泣きそうになるのを堪えながら食堂のおばちゃんに申し訳ないから
尋常ではないスピードでご飯を食べると無言で玉森くんから離れる。



こうして私たちは口を聞かなくなった。

お昼も別だし週末に集まらなくなった。
正しくは宮田くんだけ玉森くんの家に行くようになった。



玉森くんは出来る人だから仕事は定時で終わる。

私はたまにのびるけどそこまでかからない。



帰ろうとすると例の新入社員たちがやってくる。



「Aさん後はお願いします」

そう言って伝票を私の机に置く。



「え？」

「だって玉森さんがAさんなら出来るって言うし、仕事は出来る人がやった方が効率いいですよね」

って言って2人は帰ってしまう。



……は？



よく見ると伝票が普通の人の半分も出来てなくて
しかもこれ今日出さないといけないやつだ。

仕方ないから取り掛かる。



この地味な嫌がらせは毎日定時後に行われた。

あの手この手を使って2人は伝票を置いていく。
ひどい時はロッカー前に置かれていた。



ある日部長に注意される。

「Aさん最近残業多いね。気をつけて」

でも告げ口したくなくて

「すみません」

としか言えなかった。

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