すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T -side T- 3 ページ45

でも俺は素直じゃなくて。

Aに冷たく接していた。
忘れられてたのがショックで。

でもAも俺に冷たかった。
きっと女の子たち全員に嫌われてんだろーな。



そしてAと俺は同じ部署に配属される。
女の人が多い部署だった。



しかもみんなすげー香水臭い。

なんなの？気持ち悪いんだけど。



そしてまた女の人たちに囲まれてる俺は
男の人たちには睨まれる。



あぁまたか。



そして俺が全て教わってる一方で
Aは1人でマニュアルを見ながら黙々と仕事をしてた。



同じ新入社員なのに
この差は何？

何だか変じゃね？



宮田に話すと

「あはは、タマはモテるもんね。AさんはAさんでおとなしいから何も言わないんだろうし」

なんて笑ってる。



「お前Aと話すことあんの？」

「んー、研修の時何度か。めちゃめちゃ優しくて研修で同じグループワークで一緒になった時、出来てなかった俺にあの子だけ最後まで付き合ってくれたよ」

「へー」



優しいのは相変わらずか。



「せっかく同期なんだし3人で仲良くしよっか」

「…うん」

って答えはしたけど。



宮田がAと仲良くなるのも
Aに宮田を取られそうで嫌だし
Aが宮田と仲良くなるのも
宮田にAを取られそうで嫌だった。

ガキみたいだな俺。



「タマがAさん誘ってよ。同じ部なんだし」

「えー…」

「週末飲みでも行こうよ」

なんて宮田がニコニコして言うから断れなくて。



どのタイミングで声を掛けようか困ってたけど
ある日Aと俺しか部内にいない日があって。

あ、今ならいいかな。



「宮田と飲みに行くけど行かない？」

声を掛けたけど緊張で顔が引きつる。
そんな俺に少しムッとした顔をするA。



何でそんな顔すんの？



「いえ結構です。声掛けてくれてありがとうございます」



笑いもせずAはペコっと頭を下げてから立ち上がると
資料を取りに行く。



その時にフワッと香ったAの香りが
甘くて少し柑橘系の香りがして。

すごくいい香りだった。



その日の夜に宮田にダメだったことを報告すると

「えー！ダメだったの？」

めちゃガッカリされる。



「タマはAさんも苦手なの？」

「『も』って何だよ」

「え、タマ女の人苦手でしょ？」



宮田にズバリ言われてすごくびっくりした。



「苦手だけどAは平気」

「…そっか」

「また声掛けてみる」



宮田にはそう言ったけど結局全然掛けられなかった。

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