すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 13 ページ16

私は課長にバレないように
見つけたものを手に取って距離を取る。



「私と玉森くんが
どういう関係だと思ってるんですか？」

「だからカラダの関係なんでしょ？」

「会社で話してるの見たことあります？」

もう玉森くんとは2ヶ月近く話してないのに。



「だから会社では他人のフリしてるんでしょ？」

そう言って課長がさらに近づいてきたから

「違います。私は元々仕事も遅くて玉森くんから認められてすらいないんです。だからこうして私は残ってますし」

距離をまた取りながら離れる。



「でもあの新入社員の子たちが言ってたよ？Aさんにだけ甘いのはいつもカラダで払ってるからだって」



総務は個人情報を扱ってるから
他部署とパーテーションで仕切られている。

そう言って今度は手を伸ばしてきたからもう少し距離を取って他部署の方に向かう。

けど他部署には今日に限って誰もいない。



背中を向けたらダメだ。

そう思って前を向いたまま下がっていたけど
なにかに躓いて転んだ。



「大丈夫？」

そう言いながら課長が手を伸ばしてきて明らかに手じゃなくて胸の方に手が伸びてきた。



どうしよう、怖い。



でも慌てて身をかわして立ち上がった時に

「何してんの？」

声がした。



見ると玉森くんが居る。



「へぇー、玉森と今からここでシようとしてたんだ？」

なんて課長がニヤニヤしてる。



「……は？」

玉森くんが怪訝そうな顔をした。



今だ、と思ってパソコンも伝票もそのままだったけど

「失礼します！」

そう言ってひとまず逃げる。



玉森くんと課長が残って何しようが私には関係ない。

とにかく走って逃げて外に出ると息を整える。



…どうしよう、まだ2人は事務所に居るよね。

ロッカーに戻らないと定期も家の鍵もないし。



仕方ないから回りをウロウロして
22時を廻る頃さすがに課長も帰ってるだろうし事務所に戻る。

事務所の電気はまだついてる。
他の部の人だといいなと思いながら入ると私の席に玉森くんがいた。



「…何してんの？」

すごい怒った顔。



「課長は？」

玉森くんとの久しぶりの会話がこれか、なんて遠くで思う。



「なんか訳分からないこと言ってあの後すぐ帰った」

怖い顔のまま玉森くんは言う。



私は席に戻りたいけど玉森くんが動いてくれないと戻れない。



「そこ、どいてもらえない？」

そう言うと

「まず俺の質問に答えろ。何してんの？」

私の席で足を組んだまま玉森くんが私を睨んだ。

秘めた想い T 14→←秘めた想い T 12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す