拾ってください。2

Flamingo 16 ページ31

確かに約束なんて
してなかった。


裕太は悪くないんだけど。



カップルといえば一緒に過ごすって言われてる
クリスマスも年越しも仕事って言われたら
何だか急に悲しくなる。



「え、Aそういうの気にするの？」

「……」

「ゴメン、俺そういうの全く気にしなくて」



なんて言うけど

「誕生日はあんなにお祝いしてくれたのに？」

って言ったら裕太は少し困った顔で。

「だってクリスマスは他人のお誕生日なんだもん」

少しむくれていかにも裕太らしいことを言う。



勝手に一緒に過ごすと思ってたから
何だかショックだった。



なんて言って分からなくなって黙っちゃう私に

「……A？」

裕太が心配そうに話し掛けてくる。



「お正月の朝、来てもいい？」

そう聞かれたけど

「お正月は実家に帰る」

って咄嗟に嘘をついた。



もし仮にクリスマスや年越し終わった後に来る予定だった裕太が
やっぱり来れないって言われたりしたら怖かったから。



日常には裕太がいるけど
特別な時に裕太が来ないとか。

急に『やっぱり私は本命じゃないのかも』って不安になった。

でも『何の仕事してるの？』って怖くて聞けない。
そのくらい、裕太を失うのが怖くなってきた。
どう言われても『クリスマスイブを過ごす他の誰か』を想像しちゃうから。



「クリスマスは？」

「その日は先生のクリスマス会のお手伝いに行くから」

それはホントだった。
でも本当は15時には終わるんだけど。

「…そっか」



なんて今更残念そうな顔されても。



「もう年内会うのは今日が最後かな」

そう言うと

「えぇーーっ」

残念そうな顔をする裕太。

「年越しに裕太いないなら私もう帰る」



「…帰っちゃうの？」

裕太は私を抱きしめて寂しそうな顔をしてるけど。

「帰る」

違う。
本当はうちになんか帰らない。



26日とか一緒に過ごそうよって言ってくれないかな。
なんてどこかで思ってる自分がいたけど

「おうちに帰るなら仕方ないか」

なんて本当に寂しそうに裕太が言ってくれるから。



本当は帰らないよ。

なんて今さら言い出せなくなっちゃった。



「じゃあ今日はいっぱいくっつくね」

裕太は抱き締めてくれるけど

「……」

もう何も言えない。



だからただただ
何も言わずにくっついて過ごした。

そんな私を優しく抱き締めてくれる裕太は
次の日の朝寝たフリをしてる私を起こさないように
そっと帰っていく。



起きて見送れない子供な私を許して欲しい。

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