拾ってください。2

Flamingo 21 ページ39

「ねえ、一成」

「なに」

「電話の掛け方と切り方…」

「後でな」

「…冷たい」

「冷たくもなるっつの」

裕太との電話が終わってから一成がすごく冷たい。



「なんなの？あの態度」

「…何よ」

「『私も会いたい』って。ねーちゃんのあんな顔初めて見たんだけど」

「………だって」



恥ずかしい。
ただでさえ恥ずかしいのに人に見られてるのはさらに恥ずかしい。



「でも痛いって。電話中にぶたないでよ」

「なんか腹立ったんだよね」

「なにその理由」



ぶたれてつい「痛い」って言っちゃったし。
裕太が心配してたし。


そうこうしてると映画館につく。



「で？なんの映画？」

「アニメ」

「は？」

「これ」

一成がスマホを向けて見せてくれたのは可愛らしい女の子たちの映画のサイト。



「…可愛いね」

「引きつってますけど？」

「奥さんに怒られない？」

「嫁もハマってる」



話してるうちに映画のチケットやグッズの売り場につく。
他のグッズや前売りチケットも買えるからまぁまぁ混んでた。



「え、おひとり様1点までだって。ねーちゃんも並んでよ」

「並ぶの？」

「うん」



仕方ないなーなんて思いながら並んでたら大型スクリーンで流れていた映画の予告の

『もう来るって？』

っての声が裕太にそっくりで思わず振り返る。



私も大好きな人気の作家さんの実写版の予告だった。



「………え？」



そのスクリーンに映し出された顔に
全身の血の気が止まった気がした。




裕太だ。




え？見間違い？




もう一度流れる予告。

最初から見るとやっぱり裕太だ。




え？

裕太って俳優さんなの？



「ねぇ一成」

「なんだよ」

「この人知ってる？」

裕太を指さす。



「あぁキスマイの玉森裕太だろ？」

って答えたのとキャストの中に

『玉森裕太』

の名前を見つけたのは同時だった。




…嘘でしょ？




「ねーちゃん？」

一成が声をかけてきたけど何もリアクションが出来ない。




どうしよう。

震えが止まらない。




「え？…ねーちゃんまさか『裕太』って」

一成が言ってるけど何も言えない。



別の予告が始まって我に返る。



「ねーちゃん？」

「あ、ごめん。買おうか」

「いやいやねーちゃん顔色悪いよ？」



そりゃそうだよ。

裕太は確かに自営業って言ったり謎が多かったけど。



キスマイって。

裕太はジャニーズのアイドルだったってこと？



だとしたら

私はとんでもない人を好きになったって事だ。

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