拾ってください。2

Flamingo 15 ページ29

裕太は私に
とびきり甘い時間をくれた。

うちに来ると裕太は
ずっとくっついてきて
ソファに座る時は私を膝に乗せる。
私がソファを背もたれにして座ってると
私を足の間に入れる。

お風呂に一緒に入って
洗いあいっこしたりしたり
ベッドに入るとソウイウことをすることもあったけど
抱き合ったままずっと話して過ごす日もあった。

ものすごく幸せで
ソウイウことをするのも痛くなくなって
とにかく気持ち良くて
裕太も気持ち良さそうで
そんな裕太を見ていたくて
ソウイウことが好きになってる自分がだいぶ恥ずかしい。

裕太には絶対言えない。



年末が近くなって
クリスマス前の22日に実家から電話が来る。

『年末年始は帰って来るの？』

お母さんが言う。



そういえば裕太と年末年始の話なんてしてないな。



でもクリスマスとか年越しとか
一緒に過ごせるかな。



なんて勝手に思って

「帰らない」

って言う。



『え！？』

「今年は帰らない」

『なんで？コンクールあったっけ？』

「ないよ」

『どうしたの？』

「助っ人で出る演奏会の本番が近いから」

そういう理由にしておく。
彼氏が出来たなんて言ったら面倒だし。



『じゃあアンタ演奏家になるの？』

「まだ決めかねてるけど」

『なら一度正月に帰ってらっしゃい。30日までに』

お母さんが日にちを指定する。



ってことは。

「その日に何かあるの？」

『…お父さんの会社の人が来るの』

言いにくそうにお母さんが言うからさすがに気づく。



お見合いだな。
絶対嫌だ。



「………帰らない」

『どうしても？』

「どうしても」

『そう』



お母さんは何かを言いたそうにしてるけど。



「ごめんね、もうレッスンの時間だから」

本当は違うけどそう言って電話を切ることにした。

『うん』

「また電話する」



そう言って電話を切った。



そんなことがあった日だったから裕太に会いたいと思ったけど
裕太からは何の連絡もない。

ベッドを裕太の分空けて寝たけど裕太は来てなくて。



わかってる。

別に毎日来る約束してないことくらい。
裕太にもお仕事あることくらい。



でも今日は裕太に会いたかった。



23日になって夜遅い時間に裕太が来る。



「ただいま…って、どうかした？」

裕太にはすぐ分かるみたい。
私になにかあったってこと。



でも言いたくなくて黙ってたら

「昨日来れなかったから寂しかったのかな？」

なんて少しだけ当てて抱き締めてくれたから
結局甘えちゃう。

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