拾ってください。

俺を拾って下さい 4 ページ8

「Aちゃんは座っててー」

必要って言われた
どんぶりとかザルとかを出し終えたら
きゅうりをスライスしてくれながら
裕太くんが言う。



でも申し訳なくて座ってらんないよ。
そんなに顔色悪かったのかな。



「大丈夫、毒とか入れないから」

「いやそういうのを心配してる訳じゃなくて…」



人に料理を作ってもらうとか
お店や実家以外であんまりないからどうしていいか分からない。



「はーい、出来たよー」



そう言って裕太くんはどんぶりを持ってくる。



「卵豆腐茶漬けでーす」



裕太くんが作ってくれたのは
ご飯の上に卵豆腐とトロロときゅうりと海苔が乗った出汁茶漬けだった。

大丈夫？

卵豆腐？このプリンみたいなやつが？？
美味しいの？



「残さずに食べて下さーい」

「…はい」



一口食べてみる。



「美味しい」

トロロも海苔も美味しいし
冷たいからスルスル入っていく。



「でしょー？」


言いながら向かいに座ってお蕎麦を食べようとしてる裕太くん。


「裕太くんもお腹空いたの？」

「うん」

そう言う裕太くんのお蕎麦のパッケージをよくみると『とろろそば』って書いてある。



…もしかして私のご飯のために。



「裕太くん」

「だから裕太って呼んでってば」

「じゃあ裕太」

「なに？A」



裕太くん…じゃない裕太のA呼びにドキッとする。



「ホントにお蕎麦食べたいの？」

「うんっ、大好物」



そう言って裕太は食べてるけど。

多分夕飯食べた後なんだろう。
少し大変そう。



優しいんだね、裕太は。



「このお茶漬け本当に美味しいよ」

「なら良かった」

柔らかく笑ってる裕太。

私がお茶漬けを残さず食べるとものすごくホッとしてる。



裕太もお蕎麦を食べ終わると

「ケーキも食べよ。お茶いれてー」

ってケーキを冷蔵庫から出してくる。



「裕太はお腹いっぱいじゃないの？」

「ぜんぜんおっけー。甘いもの別腹ー」



本当に？

でもそう言うからコーヒーいれて
ケーキを食べだしたけど。



裕太は一口だけケーキを食べて

「あとはAちゃんどーぞ」

ってケーキをくれた。



やっぱりお腹いっぱいだったんじゃん。



でも裕太の優しさが嬉しかったから

「ありがと。甘いもの大好き」

って言って食べたらやっぱり嬉しそうに笑ってる。



これでもう会うこともないのに
そんな私に優しいんだね、裕太は。

この顔とスタイルだしさぞかしモテるんだろうなー。



普段何してる人なんだろう？

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