拾ってください。

俺を拾って下さい 2 ページ4

「お邪魔します」

「どうぞ」


結果倒れかけてたその人に
家に上がってもらった。



「あー、涼しいー」

タイマーで30分くらい前に冷房を入れていたからちょうど冷えててその人は幸せそうに笑ってる。



「手とか洗いますか？」

「うん。うがいもしたいー」

「じゃあタオルも出しますね。何か飲みますか？」

「はーい。なんでもいいでーす」

洗面所でタオルを渡して手洗いうがいをしてもらってからリビングに案内する。



その人は部屋の真ん中にあるピアノに

「え、大きいっ」

びっくりしてる。



「ここマンションじゃん。いいの？」

「防音なんで」

「へー」

テーブルに麦茶を置くとソファに座ってキョロキョロと部屋を見渡す。



「ここ、テレビないの？」

「ないです。もう10年近くテレビまともに見てないですね」

「へー！そなの？」

「映画とかはたまに見ますけど。ニュースは新聞かネットで見れればいいですし」

「……はぁー、どうりで」

「え？」

「何でもない」



その人はCDコンポをじーっと見てる。



「これものすごくいいやつじゃない？」

メジャーなメーカーではないんだけど
高いことで有名なメーカーではあって。
その中でも高いものだけど見ただけじゃ分からないはずなのに。

そういうのが分かる人みたい。



「そうですね、高かったです」

「え、もしかして音楽の仕事してるの？」

「人に教えたりたまに演奏会に出るレベルですけど…」

「あぁーだからか」

その人は意味ありげに言ってるけど。



私には何で笑ってるのか分からない。



「ねー、名前教えてよ」

「え？」

「名前。なんて言うの？」

その人は柔らかく笑ってる。



「A。AAって言います」

「ふぅーん」

お茶を飲みながら言う。



それだけ？



「あ、俺の名前とか気になる？」

「え」

「俺の名前、知りたい？」

そう聞いてくるから。



多分今日だけしか会わない人の名前聞いても仕方ないよね。



「別に」

「あはははは、やっぱり？」



やっぱり？

何でそんなこと言うんだろう。
変なの。



「俺が誰でも関係ないんでしょ？」

「…まぁそんなとこ」

「あはははは、だよね」

笑ってるその人。



「俺ね、裕太」

「ゆうた？」

「カタカナの『ネ』にチョンって点がついて谷で『裕』に太いって字で『裕太』でいま28歳」

「私より1つ上ですね」

「あ、そなの？でもいまさら敬語とかいいから」

そう言って笑ってる。




…馴れ馴れしいな。

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