拾ってください。

俺を拾って下さい 1 T ページ3

仕事終わり。

明日は休みだし
何となく帰りたくなくて
マネージャーに「今日飲んで帰るー」なんて言ってテキトーなとこで降ろしてもらう。



そのまま散歩してて
蒸し暑いなーなんて思いつつ
でも喉乾いてもそのまま歩いてたら
さすがにフラフラする。

けど財布には万札しかないし
コンビニで万札って迷惑だろーしなー。

クレジットカードでもいいかな。



つかコンビニあんの？この辺。



とりあえず座りたい
と思ってたら公園が見えてブランコがある。



そのままフラフラとブランコに座って
ゆっくり漕ぐ。



しばらく漕いでたんだけど。

キィ…キィ…

あ、結構音がするな。
これ近所迷惑かも。



漕ぐのをやめてそろそろ帰ろ、と思って立ち上がったら目眩がする。




「大丈夫ですか！？」

綺麗な女の人が声をかけてくる。



「………水」

「え？」

「水下さい。それかスポーツドリンク」

ダメ元で言ってみる。




「冷たいのがいいですか？」

その人が聞いてくる。

「んー、できれば」

そう答えたらダッシュで買いに行ってくれてる。



どんだけいい人なのさ。



「はい」

しかもキャップ開けてくれてる。

「ありがとうー」

優しいにも程があるでしょ。



数口飲むと身体中に水分が行き渡る感じ。

「はー、生き返った」

あーうまっ。
水分最高。



「なら良かったです」

その人がホッとしてる。



「あ、ペットボトル代払うよ」

さすがに出してもらうのも、と思って財布を開けて思い出した。
いま万札しかないんだっけ。

ペットボトルのお礼に万札って普通引くよな。
つーかないよな。

「お金ないや…」

っていうことにしよう。




「大丈夫です、何ともないなら良かったです」

そう言ってその人は俺に水分取るように注意して帰ろうとするから
俺も帰ろうとして立ち上がろうとしたけど目眩がして座り込む。




「…救急車呼びますか？」

「ん、絶対だめー」

さすがにこの人含めて色んなとこに迷惑かかるし。



そしたらまさかの提案。




「あの…うちで休んでいきますか？」



…は？

普通見ず知らずの男、家に入れる？
てことは誰かと住んでるの？

でもチラッと手を見ると指輪してないし。



「え、キミ一人暮らし？」

「…です」

「そんな簡単に男入れて大丈夫？」

つーかそもそも俺だよ？
玉森裕太だよ？

もしかして知ってて誘ってる？



「お金ないのに動けないとかさすがに心配で」

でも顔と声のトーンがマジだ。



いい人すぎない？

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