拾ってください。

特別な日に 8 ページ38

裕太の車のBGMは
女の人の歌声の
オシャレな洋楽だった。



「オシャレだね」

「ん？」

「音楽が。スーッて入ってくる」

「あ、ホント？俺この人の歌めちゃ好きなの」



裕太の『好き』は音楽なのに
ドキッとする。



「俺にとってはAのピアノも一緒」

「え？」

「スーッて入ってくるよ」

そう言って優しく笑ってる裕太。



ものすごくドキッとした。



「…またまたぁー！そんなこと言って！！」

「そうだってば。だから聞きに行くのに」

「……」



サラッと言うから恥ずかしくて真っ赤になる。



茶化してくるかな、と思ったら

「…ホントだよ？」

そう言って裕太は私の頭を撫でる。



嬉しいのに恥ずかしくて。



「ありがとう」

「ん」



裕太の方を見ないで御礼を言うとポンポンって軽く触れて裕太の手が離れる。



離れちゃうのが寂しくなって
裕太の手を思わず掴んじゃう。



…何してるの？私。



「…どした？」

裕太もびっくりしてるけど自分が1番びっくりしてて。



「ごめんっ」

慌てて離すと裕太はまた優しく笑って

「…運転中だからまた後でね」

そう言ってもう1回頭をポンポンしくれてハンドルを握る裕太。



…どうしたんだろう、私。



頭の中がぐるぐるしてる。

何だろう、この気持ち。



ドキドキが止まらなくて
ミルクティを口にする。



「美味しい」

「でしょ？ここの大好きなの」

「裕太が紅茶って珍しいね」

「ん？俺のはコーヒー」

「違うんかーい」

「あはははは！」



笑い合ったら何だかホッとして
いつものペースに戻れたんだけど。



何だろう、さっきの。

ものすごくドキドキした。



そして

しばらく走ると目の前に広がったのは

「海？」

「そ」

「……キレイ」

夕焼けに染まる海がオレンジ色に染まってて。



「天気良くて良かったー。見れるか心配だったんだよね」

裕太がホッとしてる。



ってことは

裕太が私のために考えてくれたんだ。
すごく嬉しい。



「…初めて見た、海に日が沈むとこ」

海に夕日が沈むとこなんて初めて見る。
山の向こうに沈むとことかは小さい頃から何度も見てるけど。



「キレイでしょ」

「うん、感動した」

「車降りてみる？」

「いいの？」

「もちろん」



駐車場に車を停めると裕太が車を降りるから
一緒に降りる。

裕太はオシャレなハットを被ってて
またそれが似合う。



…でも夕方なのにハット必要？



まぁ裕太は色白だし
夕日でも日差し気になるのかな。

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