拾ってください。

俺を拾って下さい 9 ページ18

ふと疑問に思った。

何で私なんだろうって。




本当はもっと前に疑問に思うべきだった。

今の時代検索サイトで
「クラシック 初心者 ピアノ」
って調べればオススメや動画出てくるはずだし
CDコーナーにもそんな見出しのCDが沢山あるはず。



なのに何で私なんだろう？



「え？嫌なの？」

「嫌なわけじゃ…」

「じゃあいいじゃん」



そう言って笑ってる裕太。



「俺ね、Aのピアノすげー好きなの。普段こーゆーの全然聞かないのにAのピアノなら聞きたいの」



びっくりした。

こんな褒められ方初めてしたから。



ただ単にピアノを聞きたいだけだと思ってたんだけど
そうじゃなくて私のピアノがいいって言われて
本当にびっくりした。

そして嬉しくて何て言っていいか分からなくなる。

質問してるのは私なんだから
返さなきゃ。

そう思ってるのに言葉が出ない。



「あとねー、Aと食べるとご飯も美味しい」

そう言って裕太は無邪気に笑う。

確かに裕太はご飯をよく食べる。
普段から食べるんだと思ってたけど。



ピアノを褒められたのも嬉しいけど
一緒にご飯食べると美味しいとか。

こんな嬉しい事言われたの初めてだから
つい止まっちゃう。



そんな止まっちゃう私に裕太が逆に驚いてる。

「え？Aどしたの？」

私の目の前で手をプラプラさせる裕太。



「こんな事言われたの初めてで嬉しくてどうしていいか分からなくなっちゃって」

多分私の顔はいま真っ赤だ。

「そなの？嬉しいなら良かった」

裕太が驚いて私を見た後でふにゃって笑ってる。



「そーそー、今度のお題は『ビタミンが取れる曲』」

「ビタミン？」

「来月は会えなくなるから」

「え？」

「来月はお仕事が忙しーの」

寂しそうに裕太が言う。



「…そうなんだ」

寂しいな。
このところ毎週会ってたから楽しみなくなっちゃうな。

でもそんなこと言っても裕太は困るかな、と思って出来るだけ普通に言ったつもりだった。




けど

「うふふふふふ」

裕太が笑う。



「Aめっちゃ寂しそうじゃーん」

そう言って裕太が私の頭を撫でる。



ものすごくドキッとする。



「寂しくないけど」

「んふふふふ、可愛いA」

笑いながら私の頭を撫でるのを辞めない裕太。

「可愛いくもないよ」

「めちゃくちゃ可愛い。持って帰りたい」



真っ赤になって笑ってる裕太に腹が立って離れるけど

「逃げるなってー」

笑いながら追いかけてくるからさらにムッとする。

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