拾ってください。

俺を拾って下さい 7 ページ14

裕太のために弾く？



「何を弾けばいい？」

「んーと、これから決める」

裕太がそう言って笑う。



……決めてないんだ。



「あ、そしたらさ。俺クラシックとかそーゆーの疎いの。そんな俺でも聴きやすいピアノの曲聴かせて？」

裕太が言う。



「聴きやすい曲？」

「そ」



クラシックを知らない人に聴いてもらえそうなやつか。



「そもそも裕太この曲知ってたの？」

楽譜を見せながら聞くと

「ぜーんぜん」

首を振る裕太。



本当にあまり詳しくないのか。



「分かった、じゃあ…」

「あーあーあー、今日はいいよ。んーとねぇ…来週！来週の火曜日！」



スマホを見て多分自分の予定見てるんだろう。



火曜日？



「平日だよ？」

「うん」

「お休みなの？」

「そー」



そこまで言って気づいた。



「裕太って何してる人なの？」



本当は最初に聞いた方が良かったんだろうね。

考えてみたら
見ず知らずの人家にあげて
一緒にご飯食べて
ピアノ聴かせて
お題まで与えられてる状況。

ものすごく不思議。



裕太が本能的に悪い人じゃないことは分かる。

ただ普通のサラリーマンだと平日って仕事じゃないのかな。



「んーとね、自営業」



裕太はそう言ってニコッと笑う。



「お店屋さん？」

「お店じゃないけど自分で商売してる」

「…へーーー」



お店じゃない自営業？
今の時代色んな仕事の仕方有るんだな。



「あとね、また一緒にご飯食べたい」

「は？」

「あーでも指怪我しちゃいけないならホントは今日のもアウトだよね」

「今日のは包丁一切使ってないよ」

「え！」

「全部切ってあるやつ買ったしお肉はキッチンバサミ使った」

「へーー…」

裕太がびっくりしてる。



引いたかな。
でも今までこういう生活してたし。



「今の時代便利なんだね」

裕太は引くことなく逆に感心してる。



「でもとりあえずご飯は何か買ってくるね。来るの夜でいい？」

「夜？昼じゃなくて？」

「うん、夜の方が涼しいし行動しやすいから」

夜の方が行動しやすいって何？
裕太の発言が謎だけど。

火曜日はピアノ教室も休みだし

まぁいいか。



「分かった」

「ん。じゃあそろそろ俺帰るね」

そう言ってカバンを持つ裕太。

言われてみたら裕太のカバンはすごくオシャレなカバンだ。
サラリーマンじゃないな。



「うん…ってアイスは？」

「A食べていーよー」

そう言って靴を履くと



「またねーん」



ドアの向こうに消えた。

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