サイボーグな彼女 9

わからない？ 9 ki ページ4

雑誌撮影初日。

宣伝担当さんとご挨拶。



「はじめまして、炭谷です」

「北山です」



武田ちゃんの事前情報通り180センチくらいありそうな仕事出来そうな感じ。

元カレとやらはこの人だな。

炭谷さんがこっちを見てないタイミングでAに口パクで「この人？」って聞くと頷く。

普通にいい人っぽい。
ただ

「Aさん、出来上がったページの校正はAさんにメールでいい？」

なんてたまにタメ口なのが何だか気になるけど。



撮影の休憩のタイミングでタバコを吸いに行くと炭谷さんも入ってくる。

「お疲れ様です」

爽やかな挨拶をしてくる炭谷さん。

「お疲れ様です」

爽やか返しをする。



「Aさん、頑張ってますか？」

炭谷さんが聞いてくる。

「え？」

「Aさんと大学一緒で私から見てゼミの後輩なんです」

「…そう聞いてます」

「あ、ご存知なんですね」

知らないフリもおかしいかなと思って伝えると炭谷さんが驚いてる。



「偶然会った時は驚きましたがよく考えたらAさんがマネージャーって似合ってるなと思って」

「そうですか？」

「昔から細かいことに気がつくしゼミ室もAさんが居た時とそうじゃない時の差が分かりやすくて」

「へー」

炭谷さんはいくつかゼミ室でのエピソードを話してくれるけど
正直あんまり頭に入っていかなかった。



見てるだけで「あー、この人本当にAが好きなんだな」って分かる話し方をしてるから。



何となく負けたくなくて

「ものすごく俺も助かってます」

炭谷さんに言う。

「Aにマネージャーついてもらってからものすごく仕事しやすくて色々支えてもらってます」



そう言うと

「わかります。俺もそうだったんで」

炭谷さんが返してくる。



言い方が「俺」になってるところに炭谷さんの本音が見える。

含みを持たせた言い方をした俺に牽制のつもりか？
少しムッとした。



でもこれから何度も会う人だから気まずくなるのも微妙だから顔には出さずに

「ですよねー」

なんて笑ってみたら

「えぇ」

って微笑み返してくる。



タバコから戻ると
Aがタブレットを片手に近づいてくる。

「武田さんから連絡があって冬コンのリハ出来るかって聞かれたので終わり次第行くって返してあります」

「マジか！」

「スタジオに空きが出たそうです」



俺達の会話を聞いた炭谷さんが

「この後の雑誌早められるか確認するよ」

そう言ってすぐ対応してくれた。



…いい人だな。

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