検索窓
今日:54 hit、昨日:16 hit、合計:304,983 hit

わからない? 8 ページ1

電話を掛けてきたのは炭谷さんだった。



『アンケートの返信早いね』

「早い方がいいと思ったので」

『にしても朝6時って』

「北山が初めての雑誌が多かったので戻しがあってもいいようにとさっき仕上げました」

『へー』

炭谷さんが感心してる。



「もし戻しや質問があったら仰って下さい」

『分かった』

「では失礼します」

そう言って切ろうとしたら

『待ってよ』

炭谷さんに止められる。



『1度会えない?』

「会うつもりはございません」

『忙しいの?』

「ええ」

少なくとも炭谷さんに会うための時間はない。



『…俺ずっと後悔してたんだよね。Aちゃんと別れたこと』

昔みたいにちゃん付けで呼んでくる炭谷さん。



『Aちゃんは仕事で疲れた俺のためを思って会うのやめようって言ってくれてたのに』

本当はそうだった。
その当時は本当に炭谷さん疲れてて会っても寝てばかりだったから会わないようにしてたけど

「そんなことないです」

そう言うとおかしなことになりそうだから違うフリをした。

『でもゼミの皆が教えてくれたよ。Aちゃんがずっと我慢してたことと、俺の事絶対悪く言わなかったこと』

私は皆に話してないから
皆が勝手に想像して盛り上がってるだけだと思うけど。



『だから後悔した。別れた時にAちゃんは俺の事何とも思ってなかったでしょ?ってAちゃんのせいにして別れた事』



確かに別れる時に炭谷さんに言われた。
「Aちゃんは俺の事好きだったこと一度もなかったでしょ?」って。

それを私は否定も肯定も出来ずにいたから
お別れすることになった。



「でも私が炭谷さんに合わせて会おうとしなかった事も事実なんで」



自分の時間を削って会おうなんて思ってなかったからその地点で炭谷さんのことを好きじゃないんだって思う。



『俺はずっと好きだったよ、Aちゃんのこと』



炭谷さんにそう言われてもピンと来なかった。
ドキッともしなかった。

それが答えだと思う。

いまこの電話よりも早く行きたいところがあった。



「ありがとうございます。でも私はそうじゃないんで。失礼します」

もう用件は終わってると判断して一方的に切った。



電話を切って寝室に戻ると北山さんが

「…はよ」

声をかけてくれる。




ここだった。

炭谷さんとの電話よりここに戻りたかった。



いま私が一番居たい場所は抵抗する私を黙って抱き締めて眠る
いつか失う予定の北山さんの腕の中だった。

わからない? 8 ki→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (409 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
886人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

咲良(プロフ) - shizuさん» 絶対(笑)まぁそういう系だと恥ずかしいですねw (2019年7月7日 21時) (レス) id: 29a9983703 (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - ヒロメロンさん» コメントありがとうございます!キュンキュンまでが長くてクレームもいただいてたりしてますがのんびり更新しますのでまた是非読みに来て下さいませ! (2019年7月7日 21時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - ぴのさん» 仕事してて書きたくなった時の葛藤がヤバいです 笑 ほどよく頑張って更新します! (2019年7月7日 21時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - ATさん» 長かったので甘々が自分でも染みます。また是非読みに来て下さいませ! (2019年7月7日 20時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - risaさん» 正直コメントいただいた頃が一番ニヤニヤしながら書いてました。楽しかったですー。次の10はもう少しニヤニヤしながら書けそうです! (2019年7月7日 20時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:shizu | 作成日時:2019年6月18日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。