サイボーグな彼女 9

はじめての。4 ページ45

みんなと離れて
北山さんに電話をかける。



しばらく呼出音が鳴ったあと

『留守番電話センターに接続します』

って言われる。



…北山さんも飲んでるのかな。



いまものすごく北山さんに会いたかった。
北山さんの笑った顔が見たかった。

長居しないから会えないかな。
少しだけ顔見に行ってもいいかな。



電車に乗ると北山さんにLINEをする。

『お疲れ様です。いまから帰ります。お時間ありますか？』

しばらく画面を見つめてたけど既読にならない。



やっぱり飲んでるのかな。

それならうちに帰ろう。



……あ、その前に。



スマホで調べるとルームウェアのお店がある施設がクリスマス前で営業時間を延長していた。

今日を逃すとあと1日しかないから。
もし仕事入ったら行けないし。



閉店ギリギリまで時間をかけてルームウェアを選んでうちに帰る。



と、リビングに電気がついてる。




消し忘れ？
そんな訳ない。


ってことはここにいるのは北山さんだ。



慌てて寝室にルームウェアのショッパーを置くとリビングに向かう。



「ただいま帰りました」

「………おかえり」

そう言ってリビングに入ったら
振り返った北山さんがものすごく真顔。



「遅かったじゃん」

「え？」

「『帰ります』ってLINEから1時間以上経ってんじゃん」



そう言って悲しそうな顔をする。



「炭谷さんとどっか行ってた？」

ものすごくびっくりする。
なんでそんなこと言うんだろう。



「…買い物してました」

「そっか」

そう北山さんは言うけど私の手元を見てる。



手ぶらだから疑ってるんだ。



なんでですか？

電話に出なかったのは北山さんなのに。
そもそもうちに居るって言ってくれたら私だってすぐ帰ってきたのに。



「なんで北山さんはそんな悲しそうな顔をしてるんですか？」

私も泣きそうだった。




すると北山さんは驚きの言葉を口にする。

「なんかさ、俺ばっか好きみたいだなって思って」



…何でそんな悲しいこと言うんですか？

北山さんの方が
私を好きになってくれたのが早いから？

私が北山さんのことを好きなことを
全く伝えられていないから？



驚いてると
北山さんが私の顔を見てさらに驚いてる。



「え？何で？」

北山さんにそう言われて自分が泣いてることに気づいた。



「……コンビニ行ってきます」

慌てて涙を拭うと私はリビングを飛び出す。

「ちょ！待て！Aっ！！！」

北山さんが呼んでるけど私は振り返らなかった。

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