サイボーグな彼女 9

わからない？ 15 ページ15

うちに帰って
ため息をつく。



北山さんごめんなさい。

明日にはいつも通りになりますから。




明日ベッドを引き取りに来るから
ものすごく申し訳ないけどベッドの枠を壊しておく。

寝室にいたりベッドを見ると北山さんを思い出しちゃうから
お兄と北山さんが使う布団とババさんをリビングに運ぶ。



布団を引いてみるとフワッと香る北山さんの香り。



…ダメだ。

また涙が勝手に溢れる。





『えー、Aはそれで平気かよ』

北山さんの不満そうな声が離れない。



……平気なわけないじゃないですか。

いつか一緒に寝れなくなる日が怖いから
もう一緒に寝たくないだけなのに。




早くこの気持ちを忘れなきゃ。

仕事の人なだけって思わなきゃ。




その日は泣いても泣いても止まらなくて。

夜中まで泣き続けた。




だいぶ経って北山さんの香りがする布団を寝室にしまって
ソファにババさんと一緒に眠る。





翌朝ベッドを引き取ってもらった後とりあえず眼科に行くけど当然何ともないわけで。

すぐに診察が終わっちゃったから北山さんのお迎えも間に合う時間だった。

そんな時ふと美容室の前で足が止まる。



気分転換になるかな。



惹かれるように中に入って髪をセミロングからボブに切ってもらった。




全部が終わったので武田さんに連絡すると打ち合わせ中で

「北山を迎えに行く予定の小林はもう出てるから俺の代わりに藤ヶ谷迎えに行ってくんね？」

って言われて藤ヶ谷さんのお迎えに。



車に乗った藤ヶ谷さんは

「え？Aさんどーしたの？」

挨拶より先に言う。



「切っちゃいました」

「えー？失恋とか？」

「そんなとこです」

藤ヶ谷さんなら北山さんとこんな話しなさそうだし。
そう答えると藤ヶ谷さんは目を丸くしてる。



「…それちゃんと確認した？」

「確認ですか？」

「本当に失恋かどうか」

藤ヶ谷さんがミラー越しに私を見て聞く。




「最近俺の周りでも勝手に失恋したと思って髪切った子が居てね」

「そうなんですね」

「結果勘違いで両思いだったりしたからさ」

そう言って藤ヶ谷さんはどこか嬉しそうに笑ってるけど

「私の場合その人から好きな人いるって言われてて、私のことは何とも思ってないので」

北山さんに聞くまでもないんです。



「そっか」

藤ヶ谷さんはそう言うと優しい顔で

「髪型、良く似合ってるよ」

って言ってくれる。



声のトーンが優しいし色んな意味が含まれてそうで少し泣きそうになった。

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