サイボーグな彼女 9

わからない？ 14 ページ13

ひとしきり泣いた後。


大きく深呼吸をした。



恋したと同時に失恋とか。
ホントに私らしいな。



カバンを持ってきてたから
コンタクトを外して化粧をし直してメガネをする。




大丈夫。

絶対大丈夫。
私は普通に振る舞える。


だって好きな人の幸せを願うんだから。




北山さん。

腕の中に居させてくれて
幸せにしてくれて
ありがとうございます。



「……よしっ」



声を出して気合いを入れる。



控え室に戻ると私の顔を見て驚いてる北山さん。



「…どーした」

「何かが目に染みて」

「マジかよ大丈夫？」

北山さんが近づいてくる。



ここで避けたらバレる。

頑張れ。



「…もう大丈夫です」

「そか？」



頭をポンってしてくれてドキッとする。



…ダメだ。

自覚したら何もかもがドキドキする。
落ち着け。



「衣装着てると抱き締めらんねーけど」

「何で目が染みて抱き締めるんですか？その回答おかしいですから」

「あはははは、確かにな」



軽い北山さんが今は切ない。




コンコン、とノックの音。

「はい」

「予定通り始めます！本番10分前になりまーす」

返事をするとドアが開いてさっきのスタッフさんが北山さんのパーカーを着たまま現れる。



ズキッとした。



「はーい」

平然と答える北山さん。
それすらも切ない。



…ダメだ。

このままじゃ気持ち切り替えられない。



せめて今日1日を凌いで
明日からどうにかしないと仕事にならない。





収録を見守りながら色々考える。



明日からはいよいよ4日後のライブの準備だ。

午後集合だから午前中時間がある。



色々考えを巡らせる。



休憩のタイミングで北山さんにタバコを渡した後は色んなところに電話を掛けた。



バラエティの収録を終えてリハーサルに向かう。

「…北山さん」

「んー？」

北山さんは私のタブレットを見て今日合わせるフリを確認しながら返事をする。

「明日、私は念の為眼科に行くので行きは小林さんになりました」

「おー、そっかー」



そう返事すると北山さんはタブレットから目を上げる。

「マジでへーき？つか運転大丈夫かよ」

「はい。メガネにしたら何ともないので」

「………そっか」



目線をまたタブレットに落としたから安心する。

たまに手が動いててフリ確認に集中してるのが分かる。



このままなら大丈夫。



北山さんの幸せを祈るために
明日半日だけ切り替えの時間を下さい。



私は涙を堪えながらハンドルを握った。

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