サイボーグな彼女 8

そうじゃなくて 12 ki ページ4

ようやくAからLINEが既読になったことに気づいたのは
恐らく藤ヶ谷チームのキノコ狩りが終わる頃の夕方だった。

…既読までほぼ2日かかってんだけど。

しかも返事はねーし。



翌朝いつも通りAが迎えに来る。



「おはようございます」

「…はよ」



この前の後だから何となく気まずい。



「今日はサンドイッチです」

「さんきゅ」



淡々とサンドイッチをくれるA。
いつもの「動きます」って声掛けからすぐに走り出す車。



いつもミラー越しにチェックするAの目を見てみても今日は無感情で。
ある意味いつも通り。

本当にこの前喧嘩っぽくなったことすら無かったことになってる雰囲気。



でもこれって裕香の時やカオリさんの時の無感情の時に似てね？

ただ今回はAが無感情になるよーな女性絡みの原因何もねーだろ。
女性と絡むの禁止になってんだし。



「…どうかしました？」

Aがミラー越しに聞いてくる。



「へ？」

「何だか不思議な顔をして召し上がってますけど…美味しくないですか？」

「そんなことねーよ、めちゃくちゃ美味い」



それよりなんだよその『召し上がってる』とか引くほど気持ち悪い距離感のある敬語っ！

今はまだ突っ込んでいい距離感なのかよくわかんねーし。

ひとまずやり過ごして様子を見ることにした。



「昨日、どうだった？」

「同じ感じでした。山の斜面は北山さんたちの方がキツかったかもですけど」

Aからは無難な答え。

「へー。そっか」



…出来ることなら笑いたかった。

けど特に笑える話ではなかったから笑えなくて。



あーくそっ。

さっきのサンドイッチが美味しいってくだりで笑えば良かった。

振り返ると最近の俺は感謝も笑顔もAに見せてなくて
ただただ不満をAにぶつけてただけだなって気づいた。

わざと笑うなってAは言ってたけど
わざとじゃねーと笑えないって状況もなんだか嫌だな。

結局俺はまたAに笑顔を見せられずに終わった。




「北山さんは昨日どうでした？」

まさかの逆にAに話を振られる。

そう言われると逆になんて答えていいのか分からなくなる。



「んー、普通だった。あ、夜に千賀とサウナとメシ行った」

って答えた時に明らかにAがびっくりした目をしてる。



「ん？どした？？」

「いえ、サウナは私も一昨日行ったとこだったんで」

「……へぇ」

俺が聞いても誤魔化そうとしてるAに違和感しかない。



…何だよ？

そうじゃなくて 13→←そうじゃなくて 12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す