サイボーグな彼女 8

そうじゃなくて 16 ページ11

北山さんの腕の中。

ものすごくホッとして。



ホッとした瞬間

さっき弾き飛ばされたときに本当は少し怖かったこととか
北山さんが怒ってなかったこととか
心配してもらえるなんて思ってなかったこととか

全部がぐちゃぐちゃになって
何だか泣きそうになる。



「……ごめんなさい」

声が震えてる。
自分でもびっくりした。

そっと抱き返したら北山さんはさらに抱き締めてくれる。
それがまた落ち着く。



「俺の上着なんかどーでもいいだろー？」

文句みたいな言葉だけど声が優しい。



「北山さんの上着だから嫌だったんです」

そう言うと北山さんは

「でも俺はそれでAに怪我される方がヤだ」

そう返して頭を撫でてくれる。



もう片方の手は私の存在を確かめるように私の体をさする。
その手も本当に優しくて。
北山さんが心配してるのが伝わって泣きたくなるくらい。



「…お願いだからもうこんな危ないことしないで」

そう言う北山さんの声が震えている。
いつもならもっと命令口調なのに「しないで」って言う。



私もいつもなら「私は大丈夫です」って言うとこだけど
心配してるのも本当に嫌なこともわかったから

「…はい」

素直に言えた。



お互いそっと離れると目が合う。



と、北山さんがものすごく優しく笑う。



やっと。

やっと北山さんの笑顔が見れた。
その顔を見たら嬉しくて涙が溢れる。



そんな私を見てまた北山さんが笑って私の涙を指で拭う。

「もー、泣くなよー」

「だって北山さんがやっと笑ってくれたから」

「……」

そう言うと北山さんはもう一回優しく笑う。



「…今日さ、夜予定ある？」

私の涙をまた指で拭いながら北山さんは言う。



「ないです」

「もーいいじゃん。久しぶりにゆっくり一緒に過ごさねぇ？」

「……え？」

私がびっくりしてると北山さんは目尻にシワを寄せて笑ってる。



「もうさ、俺たちちゃんと会った方がいいよ」

「…ほぼ毎日会ってますよ」

「そうじゃなくて」



そう言うと私の涙を拭う手を止めて頬に添えたまま

「前みたいにさ。時間気にしないで少しゆっくりしよ」

「でも…」

もし何かに撮られたら北山さんが仕事減っちゃうし。

「いいよ、もう」

言いながらいつもみたいに北山さんは笑う。



「Aが俺の笑った顔足りてないのと一緒で俺もA不足がもう限界なの」



……私不足って。何ですかそれ。



でも少なくとも私は足りてないから

「はい」

そう答えることにした。

そうじゃなくて 16 ki→←そうじゃなくて 15 ki

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す