サイボーグな彼女 8

そうじゃなくて 14 ページ7

収録が再開して
小林さんと酒井さんに様子見をお願いして
玉森さんのタバコを買いに行く。


スタジオの中が寒かったから
帰りに控え室に寄って上着を着よう。


そう思って鍵を使って控え室に入って
電気をつけるのは面倒だったからそのまま上着を着る。



北山さんはまた何か怒ってるし
何だか戻りたくないな。



そう思いながら鏡に向かって服を整えてるとドアが開く気配。

振り返るとキャップとマスクをした人が入ってきていた。



咄嗟のことにびっくりして何も言えずにいたら
その人は入口近くにあった上着掛けから
北山さんの上着を掴んで部屋を出ようとする。



「待ってっ！！！」



私が追い掛けるとその人の方が足が遅くてなんとか追いつく。

「誰かっ！！誰か来て下さいっ！！」

大声を出したらその人が振り返って持っていたカバンで私の腕を思い切り叩く。

荷物が入っていたのかなかなかの痛さ。



思わず怯んだらもう1回その人がカバンで私を叩こうとして振りかぶったからその手を掴んで思い切り捻じる。

カバンがもう1回私に当たるけどもう夢中だった。

「返してっ！！！」

その人の背後に回ると壁に向かってその人ごと体当たりした。



そのタイミングで私の声が聞こえた警備員さんが駆け寄ってくれる。

多分他の部屋にいた人たちも出てきてくれる。



「この人多分楽屋泥棒ですっ」

私がそう言うと
その人が壁を蹴ったのか手を使ったのか分からないけど私ごと壁を突き飛ばした。
私はそのまま床に飛ばされる。

自由になったその人は逃げ出したけど
周りの人たちがその人を捕まえてくれた。



…はーーー、良かった。



ホッとしていると

「大丈夫ですか？」

近くにいた人が私を立たせてくれる。

左足をついた時に少し痛みが走る。
さっき飛ばされ時に捻ったみたいだ。

「大丈夫です」

そう笑って答えるのが精一杯。



やっぱり男の人とは力の差があるな。
もう少し鍛えないと。



あ！
北山さんの上着。

私は慌てて床に落ちている北山さんの上着を拾う。



良かった、無事で。
上着から香る北山さんの香りにホッとする。



いつの間にか周りには人だかりが出来ていて
警備員さんが私に

「すみませんが、お話をお伺いしたいのでご同行頂いてもよろしいですか？」

って聞いてくる。



そこで我に返った。



…これ北山さんに怒られるやつだ。



でも北山さんの上着を取られた瞬間。
条件反射みたいに体が動いてた。



北山さんが怒りませんように。

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