サイボーグな彼女 7

そうじゃなくて 7 ページ43

始まった登山ロケ。



北山さんや横尾さんはすいすい登ってく。

千賀さんは普通。



玉森さんは予告通りゆっくり登る。



「…みんな早くね？」

大変そうな玉森さん。



「ゆっくり行きましょう」

「あんがと」

声をかけながらのんびり登る。



しばらく登ってると

「Aちゃん飲み物ちょーだい」

千賀さんが降りてきた。



「千賀さんには特別にこちらをどうぞ」

言いながら青いタンブラーを渡す。



「…まさか」

「はい」



千賀さんが口に含んで目を輝かせる。

「やったー！Aちゃんのりんご蜂蜜生姜ティだ！しかもこれ冷たいじゃんっ！」

「作って冷やしました」

「ありがとうー！よしっ！頑張るっ！！」

千賀さんはとてもいい笑顔で遅れを取り戻すかのように登る。



こういう笑顔見るとアイドルと仕事してるなーって思う。
北山さんは私にキラキラの笑顔見せてくれないし。

特にしばらくは不満な顔しかしてない。



やっぱり私じゃ笑顔に出来ないのかな。



「…さっきのカードの子を」

小声で玉森さんが言う。

「はい？」

「千ちゃんが気に入ってるんだよね」

「……そうなんですか」

「多分ミツは捨て忘れてるだけだよ」

「そうですか」



玉森さんは答える私を見て笑って

「チャラい奴が担当だと心配かもしんないけど。ミツは真面目だから」

「……なんとなくわかります」

「あはは、そうだよね」

玉森さんが優しく笑ってる。



分かってる。

北山さんは捨て忘れただけだろうな、って。



でも何かザワザワするのは
彼女がすごく可愛いのと




……どことなく裕香さんに似てるから。





北山さんの「ずっと一緒」を信じたい自分がいるのに

マンちゃんとの連絡が途絶えたのは偶然だったし
信じてみたいって思ってるのに

漠然と不安だった。



「…だいじょーぶ？」



玉森さんが私の前で手を振って声を掛けてくる。



「はい？」

「考えごとしてる？千ちゃんのこと？」



玉森さんが聞いてくるから

「大丈夫です。みんな大人だって分かってます」

「そう？」

答えると玉森さんがホッとした顔をする。




「おーい、俺たちも飲み物ーー」

北山さんの声がする。



「一度飲み物渡してすぐ戻りますね」

「んー、あんがと」



玉森さんを置いて登って
北山さんと横尾さんに飲み物を渡すとすぐ玉森さんのところに戻る。



「早いじゃん」

「山道得意なんで」



辛そうな玉森さんにタオルを渡すと
嬉しそうに笑ってくれた。

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