サイボーグな彼女 7

帰らない 15 ページ11

収録は順調に進んでる。



武田さんにはそのすぐ後に事情を話していたから

「これ事務所に提出したら帰っていーぞ」

そう言って書類を渡してくれる。



藤ヶ谷さんを送ってた時に来ていた着信が父からの連絡で
「4日後でどうだ？」っていう急な提案を武田さんが調整してくれて今日会うことになった。



「…頑張れよ」

珍しく優しい武田さん。
あんな北山さんの後だから余計に染みる。

「ありがとうございます」

お礼を言って
メンバーは収録中だから挨拶出来なかったけど
マネージャーの皆には声を掛けて帰る。



まだ時間は11時で福島行きの新幹線は15時。
最悪そのままの予定だったけど帰って着替える時間が出来た。



部屋に戻って着替えて
髪をおろして内巻きにしたり少し化粧も念入りにしてみる。



早く帰れたお陰で支度に余裕が出来た。


時計を見ると13時。




まだみんな仕事してるよな。

北山さんの顔が思い浮かぶ。




…私はちゃんと言ってたのに。

聞いてない北山さんが悪いんじゃないですか。



私のプライベートの話を「聞いてますか？」って確認するのおかしいし。

だから確認しなかったのに。



しかも最近、北山さんの笑顔を直視できない。

仕事の笑顔は別として。

普通の会話の笑顔は私が見ていい笑顔ではない。

彼女の特権なんだから
彼女だけが見ていい顔のばす。

そう思ったら北山さんの笑顔が見れなくなった。




…ダメだ。

暗いこと考えてたら行きたくなくなってきた。



父の幸せだけを考えよう。

久しぶりピアスを付けようと思って
ピアスケースを手にした。

ふと。
ホワイトデーで北山さんから貰ったピアスをした時に
北山さんが満面の笑顔を見せてくれたことを思い出す。



…あれくらい笑わないと。



私はピアスケースを置くと
北山さんから貰ったラッピングに入れたままになっている箱を開けた。

そして、赤のピアスを取り出す。



お守り代わりに付けよう。



時間が近くなったので出ようとしたらLINEの着信音。

北山さんからだ。



『さっきはゴメン。ちゃんと聞いてなかったの思い出した。』



そう来ていた。



もしかして昨日は彼女とやり取りしてたのかな。



だから私との話が適当だったんた。
だとしたら仕方ない。



『こちらこそ確認不足で申し訳ございません。』

そう返すとカバンの奥にスマホのを仕舞う。





私はみんなの幸せだけを考えよう。
お父さんと北山さんと。




私にはそれくらいしか出来ない。

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