サイボーグな彼女 7

帰らない 10 ページ1

やっぱり北山さんの腕の中は
気持ちいい。



北山さんの香り。

体温。

鼓動。


全てに癒される。



しばらくそのままでいると



「♪Happy birthday to you〜 Happy birthday to you〜♪」


耳元で北山さんがゆっくり歌い出す。
背中に回した手でポンポンってリズムを取りながら。

「♪Happy birthday dear A〜♪」

名前を呼んで頭を撫でてくれる。


少しの沈黙。


「♪Happy birthday to you〜♪」




歌い終わるとまたぎゅっと抱き締めると北山さんは言う。

「…聞いて無かったけど？今日誕生日って」



確かに言ってない。

武田さんにも今週のいつとは言ってない。
ということは。



お兄か。



「誕生日って歳でもないし」

「それ、誕生日の夕飯要求した俺にケンカ売ってる？」

そう言って北山さんは笑う。



抱き合ってるから北山さんが笑ってる振動が伝わる。

それもまた心地良い。



「あー、ヤバい」

そう言うと北山さんは腕を解く。



そうですよね、ヤバいですよね。
北山さんには彼女いるのに。


私も解くと北山さんから離れて涙を拭う。



と、北山さんはベットの布団をめくると

「もうここで寝てっていい？」

そう言って布団に入る。



「えっ？ダメに決まってるでしょう？」

「もー限界」



そう言うとぬいぐるみを私の奥に置いて

「ほら、Aも寝よ」

北山さんは寝転がりだす。



何を言ってるんですか！？

北山さんには一緒に過ごす人居るのに！



でも、知ってて抱き締めてもらってる私もおかしい。
ズルい私は彼女のことを言い出せない。



「私が向こうで寝るんで」

そう言って立ち上がろうとしたら北山さんは腕を掴んで

「だーめ」

そう言って私側の布団をめくる。




「おかしいですからっ」

私が抗議しても

「いーの、おかしくて。明日昼からだし少しゆっくりだし…」

北山さんは本当に寝そうな声で言う。



そして

「起きた時にAが居なかったら俺明日から1週間泊まり続けるからな」

薄目を開けて言うと私の腕をつかんだまま寝だす。




…振りほどこうと思えば出来るけど。
北山さんの腕の中を知った私には出来なくて。




彼女さん
ごめんなさい。

今だけ北山さんを貸して下さい。



結局隣に横になると

「つーかまーえた」

北山さんはそう言って私の方を向いて抱きしめる。



「ふふふっ、おやすみー」




…何が「つーかまーえたー」ですか？




でも、やっぱり北山さんの腕の中は心地良い。

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