すぐ近くにいる another story

ヤマアラシな彼 2 -side2- 8 ページ21

誘わなかった週明け。

挨拶だけは欠かさずしてたけど、Aさんはずっと忙しそうで話すタイミングはなかった。



そして今日もいつものようにAさんがオフィスを案内していた。



と、その見学をしていた女の子が

「あれ？二階堂君？」

声を掛けてきた。



よく見ると高校の同級生だった。



「おぉ、久しぶり」

「だね。いまここで働いてるんだ」

「そう」



少し話してたら「あっ！」て顔をするとその子か俺に近寄ってくる。



「偶然会えて早速なんだけどお願いがあるんだ！後で連絡していい？」

「…構わないけど」

「助かるー。これ私の携帯。終わったら電話して」

「分かった」



Aさんが見てるのが少し気になったけど、俺も付箋に携帯を書いて渡す。



「ありがとう」

「ん」



ふと顔を上げると、じーっとAさんが見てたけど俺と目が合うと逸らす。

あ、やっぱり微妙かなと思ったけどとりあえずそのまま仕事をした。



終わったから同級生に連絡すると、今度結婚する同級生にサプライズムービーを撮りたいって話だった。

まあまあ仲のいい奴だったから承諾する。

「いつ撮る？」

「今週末は？」

…その日はAさんと出掛けようと思ってたんだけど。



「そこだとめちゃくちゃ助かるんだけどなー」

「…じゃあその日で」

「ありがとうっ！」

近所の公園を指定される。



あー。
休みの日だしAさんと会うと気まずいな。



なんて思ってたら、やっぱり会う。

しかも俺とその同級生が動画を撮り終えて並んで歩いてて、昔の話で盛り上がってるタイミングだった。



Aさんは無表情だった。



え、そんな顔する？
無表情ってどーゆーこと？



チェリーちゃんが俺に気づいて駆け寄ろうとしたところをAさんが抱える。
そして来た道を戻っていった。



「あれ、この前の案内してくれた人だよね」

同級生が気づいて言う。

「…うん」

「いいの？追い掛けなくて」

「え？」

「二階堂君、ものすごく悲しそうな顔してるけど」

「……そう？」




でもAさんが無表情過ぎて。

びっくりして何も出来なかった。




そして次に会社に出勤した時、
いつも俺が挨拶に行く時間にAさんは席に居ない。



…出勤すらしてない？



「今日Aさん休みですか？」

総務にいた人に声を掛けたら

「Aさんはこれからフレックスで朝遅くなることになりました」

って言われる。



程なくしてLINEも既読がつかなくなった。

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