すぐ近くにいる another story

ヤマアラシな彼 2 -side2- 1 ページ14

Aさんの第一印象は最悪だった。
ただのガミガミババアだった。

勝手にフリーアドレス導入しておいて
行く先々で俺への貼り紙貼って居場所無くしてく。
そんな印象だった。



ミツさんが同期だったなと思って話を聞くと

「あーA？アイツすげーいい奴だよ」

ものすごく笑顔で言う。
びっくりするくらい。

ミツさんが会社の人の話でここまで笑顔なのを見るの初めてだった。



「あんなにガミガミうるさいのに？」

「あれはアイツが断れなくてやってるだけだから」

そう言ってミツさんは笑ってる。



「嫌われ役を買って出ちゃう奴なの。損な性格なんだよなー」

「…なんか俺目の敵にされてる気がするんですけど」

「違う違う。多分アイツはそうしないといつかお前が怒られるから先に言ってるだけ」



…ものすごく庇うじゃん。




数日後、俺がコツコツブース間を移動してる時にガミガミさんと目が合う。

コツコツブース間を移動するのもダメなのかな。
何かを言われる前に

「何か文句ありますか？」

って言ったら、能面みたいな顔で

「お仕事頑張って下さい」

ってお辞儀した。



…なに今の。

違和感を感じながらも、そう言えば引越しの申請をしていないのを思い出してガミガミさんを追い掛けた。
すると、開発と営業で楽しそうに仕事してるのをじーっと見てる。

ものすごく寂しそう。

その横顔がなんかキレイで思わず見とれたけどガミガミさんがまた歩き出したからついてく。



ガミガミさんが席に戻ると上司から

「集中ブースとコツコツブースにずっと営業の子がいるみたいだけど」

って声を掛けられてる。



あ、やば。
俺の事だ。

慌てて隠れた。


ガミガミさんにも文句言われると思ったら

「でもルールは守ってますから」

って言う。



…嘘でしょ？
俺のこと庇ってる。




「そうなの？でも他の人とコミニケーションとるように勧めたら？」

「営業さんは外で気を遣って話す分疲れるから、戻ってきた時は1人になりたいですよね」

尚も言う上司の人を止めてくれてるガミガミさん。



…すごい庇ってくれてる。
俺あんなに酷い態度取ったのに。



「引越したんで申請書下さい」

ガミガミさんに声を掛けると、さっきの能面みたいな顔で申請書を渡された。



あ、さっきの移動する時に見せた顔と同じ。
これは怒らせてる。

咄嗟に思ったけどさっきの態度を謝る勇気もなくて。



すごすごと席に戻るしかなかった。

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