すぐ近くにいる another story

期間限定。 Ｍ 1 ページ44

…また7月がやってくる。

社会人4年目なので
この時期を迎えるのは4回目。



私が勤める会社は名前を聞いたら日本人の8割以上が知っているであろう大きな会社。



の、子会社。



よく言えば親会社の関連会社で出向先。
悪く言えば親会社の天下り先。



定年間際の人が出向してきてそのまま定年を迎えることもあれば
親会社で何かをやらかしてきて出向してくる人もいる。
本当に稀の中のに稀に子会社だけを回ってる人もいるけど。
それは稀で。



共通してるのは
定年間際以外は3年経つと居なくなること。



6月の中旬になるとバカみたいに送別会をやって
7月になると人が入れ替わって
良くなる部署もあれば悪くなる部署もある。

でも7月になると周りのメンバーが変わるから
どうにか変わる。



それが良くもあり悪くもなる。



最低な人は「3年だけだし」って単身赴任で出向してきた人が不倫を楽しんだり。

先輩がその餌食になった時は泥沼だった。



すごく楽しそうに仕事をしていた部署が
パワハラ上司がやってきて墓場みたいになったり。

さすがにパワハラ上司は飛ばされたけど
次に来た上司は普通だったけど
1度バラバラになった部署は元通りならなかった。



そんな会社だから
やっぱり合わないって辞めてく人
待遇はいいからって残る人
変化があってやりがいがあっていいって言う人

それぞれだった。



ちなみに私は
『待遇はいいから残る人』

最初はこの会社の仕組みが分かってなかったから
ただひたすら仕事をしていた。


けど…



「Aさん」

課長に呼ばれる。



「新しく来る係長、Aさんの隣の席ね」

サラッと言われる。



嫌です、なんて言えないから

「はい」

返事をすると空いていた隣の席を片付ける。



「Aさんはなんでも言う事聞いてくれるから助かるなー」

ニヤニヤしながら言う課長は同じく出向の人。



同じ部署の人、って言っても私と課長以外に3人しかいないけど
みんな見て見ぬフリ。

こんな状況も慣れてるし無表情で片付けて文房具も揃えたりパソコンのデスクトップも設定する。




そして7月。

他の部署にも1人から3人来てる中で
うちの部署に新しくやってきた係長。



「宮田俊哉です。よろしくお願いします」



ものすごく優しそうな顔をしてる。



「席はそこに居るAさんの隣で」

「はい」

宮田係長は返事をすると私の隣にやって来て

「Aさん、よろしく」

ニコッて笑ってるけど。



最低限の会釈をした。

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