すぐ近くにいる another story

ヤマアラシな彼 2 4 ページ4

フリーアドレス導入から1ヶ月。

皆席の移動に飽きたのかだいぶいる場所が固定されていた。

営業系は話しながらできるスペースに、
開発系は資料が沢山あるスペースに、などなんとなく棲み分けがされている。


一番文句を言ってるのは導入した張本人たちである経営陣で「部下の居場所が分からない」なんて言い出した。

…そんなの部内で解決してくれよー。

仕方ないから会社で登録者を登録できる『ビジネスLINE』を社用スマホに入れて部内で連絡を取り合ってもらう。

緊急連絡網にもなって色々解決する。



相変わらず二階堂君は『集中ブース』か『コツコツブース』の住人だった。
営業に行って帰ってくるとどちらかに居る。

『コツコツブース』にも人気が出てきたので『コツコツブース』にも『1日3時間まで』というPOPをつけた。

しかも『コツコツブース』は5つあったから、考えた二階堂君はその5つを渡り歩くようになる。

3時間経つと隣、さらに3時間経つとまたさらに違うブースに行く。
『コツコツブース』から営業に言って帰ってくると『集中ブース』に居たり。



今日はちょうどそのブースを移ってるタイミングで私が通りかかったらものすごく嫌そうな顔をする。

「何か文句ありますか？」

…まだ私は何も言ってないけど。
しかもそれをダメだなんて言ってないのに。

ものすごく腹が立ったしむしろ悲しくなったけど、

「お仕事頑張って下さい」

とだけ言ってお辞儀をするとそちらを見ないで立ち去った。



談話スペースを通ると営業と開発の人が楽しそうに話しながら仕事してる。

いいなーみんな楽しそうで。
私もこういう感じで楽しそうに仕事したい。

ガミガミ言ったり文句言われたりする仕事なんて楽しくない。



ため息混じりに席に戻ると上司から

「集中ブースとコツコツブースにずっと営業の子がいるみたいだけど」

って言われる。
二階堂君のことか。



「でもルールは守ってますから」

「そうなの？でも他の人とコミニケーションとるように勧めたら？」

って上司は言う。



…分かってるのにあなたが言ってくれる訳じゃなくて私に言わせるんですね。



「営業さんは外で気を遣って話す分疲れるから、戻ってきた時は1人になりたいですよね」

知らないけどフォローすると

「あーなるほど」

なんて上司は納得してる。




気配を感じて振り返ると二階堂君。

「引越したんで申請書下さい」

このタイミングで君に会いたくなかった。
私は無言で渡した。

ヤマアラシな彼 2 5→←ヤマアラシな彼 2 3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す