この想いの結末は 8

まだ間に合う ページ4

Mステのリハ終えて楽屋待機中にスマホを確認する。

夕方になってようやくAから連絡が来ていた。



『昨日は仕事だったのに疑って最低なこと言ってごめんなさい。』

『連絡遅くなってごめんなさい。また連絡します！』



…違う。
俺が聞きたいのはそんな言葉じゃない。



もっと怒ってほしい。

勝手なこと言ったり約束破ったりする俺に。
バレンタインなのに会えもしない俺に。

ごめんって言わなきゃいけないのは俺の方なんだから。




「なー藤ヶ谷ー」

北山が珍しく声をかけてくる。



「武田ちゃん今日ご機嫌過ぎない？」

「そうか？」

昨日の今日だから俺にはやたらクールぶってたけど。

「さっきリハでフリ間違えた時、いつもならめちゃくちゃ怒るのに『本番気を付けろよ』だけだったんだけど」

…確かにいつも厳しいマネージャーがそれは珍しい。
これはマネージャー何も言わないけどアコとうまくいったな。



「北山が映画で忙しいの知ってるからじゃない？」

でも一応そう言って誤魔化す。

「…そか？」

北山は少し納得した様子。

「明日からの舞台挨拶、移動大変だろ？頑張れよ」

「ん、さんきゅ」

笑ってる北山。




そうこうしてたら

「本番でーす」

スタッフさんが呼びに来る。



本番中。

いつも噛み締めて歌ってはいるけど。


『ごめんね なんにもしてあげられなくて いっぱいいつも君に 貰ってばかりだな』

ニカのソロがすごく染みる。



『もしも 時計 戻せるなら もしも 言葉 交わせるなら』

北山のソロも俺に言ってる？って気持ちになる。



2人のソロの後だからか

『追いかけてももう遠すぎて』

最後のサビの歌詞がやたら重い。




…いや、今ならまだそう遠くない。



まだ今なら。





俺は本番を終えて戻ると着替える前にスマホを取るとAに電話する。



…出ない。




数回かけたけど出ない。




「ねー、マネージャー」

「ん？」

「明日夕方からだよな」

「…あぁ」

「今日アコと会ってるって言ってたよな」

俺が言うとマネージャーは渋い顔。



「…止めても行くよな」

「今日だけは」




いま会えないと絶対拗れる。



Aは絶対距離を置く。


そんなことはさせない。




絶対に。

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