潜書壹・自然主義 ページ21
「お気を付けて。それでは、潜書を開始致します。」
その言葉と共に本の中に吸い込まれる如く光に包まれたのは
国木田独歩、島崎藤村、田山花袋、徳田秋声
今日、この四人が例の本に潜書したのだ。
其れ其れ同じ武器で戦力的に不安があるが、信頼しあえている仲間と戦った方が良いという希望を司書は通したのだ。
三日前に行った潜書の報告から、四人は潜書した反動ではぐれないように手首を紐で結びあった。
「っ・・・此処、有碍書の中?」
云ったのは筆頭の徳田秋声。
霧も晴れ、手首紐のおかげで四人ははぐれなかったが
「ここは、港?」
四人は見慣れぬ港に居た。空は綺麗に晴れているが、夥しい文字が埋め尽くしていて目が霞む。
「取り敢えず、紐外そうぜ。」
国木田が鬱陶しそうに手首の紐を眺めた。
「今取るよ。」
徳田は熟れた手付きで紐を取った。この紐は徳田の所持品だったようだ。
「んで?侵食者が居ないんだけどー。」
「まぁ花袋、司書の話じゃ侵食者は人の内側に隠れてるらしいじゃん?まずは人探しだな。」
国木田は冷静に、いや、愉しそうに辺りを見渡した。
人は一人も居ないらしい。
「探すって何処を・・・あれ、島崎は?」
ふと、徳田が島崎が居ないことに気付いた。
先程まで島崎が立っていた位置には誰の影も無い。
「おーい、皆」
すると、数米離れた倉庫の影から島崎の声。
島崎は不自然に顔を半分こちらに覗かせている。
「そんな所に・・・おい藤村!こっち戻れー!!」
田山は叫んだが、島崎は動く様子が無い。
「無理だよ、だって・・・」
数秒遅れて、島崎は倉庫の影からこちらに向かって歩き出した。
それを見た他の三人は、驚きのあまり絶句した。
倉庫の影から出てきたのは、島崎だけじゃ無かったのだ。
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エリカ - すごく面白かったです!続きを待っています! (2018年3月17日 10時) (レス) id: e5d2f5896d (このIDを非表示/違反報告)
庵 - こういうの探してました!いやぁ、これは鼻血もんですね。更新期待してます。頑張って下さい!! (2018年3月10日 0時) (レス) id: 359f234116 (このIDを非表示/違反報告)
くれーぷ/紅花(プロフ) - 文アルと文ストどちらも好きな私にとっては嬉しすぎて昇天しそうでした…← 出てくる文アルキャラが文ストキャラと同じ名前の人だけじゃなく色々な人が出てくるのですごく面白いです!更新楽しみにしてます( ´∀`) (2018年1月23日 19時) (レス) id: d036a490f0 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - 面白かったです。すこし気になったのですが、登場人物が侵食者というのは、作者さんのオリジナルでしょうか? この前別の小説で見たことがありまして…。偶然ならいいのですけれど、少し気になりまして…。 (2018年1月20日 18時) (レス) id: 48db98a9a7 (このIDを非表示/違反報告)
苺パフェ - とても面白かったです!ボクは空白のSecretさんのほかの作品からここにきたのですが、どの作品も面白くてすごいです!応援しているので、頑張ってください! (2018年1月20日 13時) (レス) id: 92fa33393a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空白のSecret | 作成日時:2018年1月7日 22時