多分 ページ47
「さっき頂いたものなんですけど…」
良かったらどうぞ、と。私はそう言いながら、包まれた可愛らしい風呂敷を解き、箱を露にさせる。旦那は隣でチョコレートが出てくるのを目を輝かせて待ち構えている。甘味が絡むと、彼の目はキラキラと輝き出す。いざと言うときに煌めくと言われている彼の死んだ目は、この瞬間のためにあったのだと思わせるほどに、今の彼の目は煌めいている。そんな彼がいつもより更に子供っぽくて、クスリと笑ってしまいながらに、私は箱の蓋に手をかけた。そうして、それをカポリと開ける。
お妙さんのチョコレート、どんななのかな、沖田隊長にあげるものの参考にさせて貰おうかな、なんて考えていれば。
「…ん?」
「…ん?」
…私は期待に溢れた笑みを浮かべたまま、そんな声を漏らして動きを止めた。その隣で、旦那の動きも止まった。私達二人の間に、沈黙が降りてくる。同時に言葉を失った私達は、ただ箱の中身を見据えては立ち尽くすことしか出来なかった。公園には風が吹き、葉を落とした木の枝が揺れてカサカサと微かな音をたてていた。鳥が鳴き、何処かから車のクラクションが聞こえてきた。そんな音を耳にして、私はパチクリと瞬きをした。そうして旦那に横目をやれば、彼は顔を青くさせていった。
…そして旦那は私に問い掛ける。少し掠れた、捻り出したような声で。
「…オイ、これは、誰からの貰い物だ」
「……お、お妙さんです」
「やっぱりかアアアア…!!」
私が答えると、旦那はその場にしゃがみ込んでしまった。見下ろしてみれば、ふるふると彼は震えている。そんな旦那を一瞥して、私は再びお妙さんからのチョコレートを見つめる。
…それはこれ以上なく真っ黒で、チョコレートとは程遠い物体であった。
「…旦那、これは……毒物処理班に連絡した方がいいのでしょうか」
「いや、限りなく毒物に近いが、それは、信じられないかもしれないが、チョコレートだ……多分」
「…これは、チョコレートなのですか?」
「…チョコレートだ……多分」
多分、とは何だ多分とは。けれど旦那はこれをチョコレートなのだと言う。これが、本当にチョコレートなのだとすれば。お妙さんが仕事仲間のために作り出したチョコレートなのだとすれば。
「…すごく……アヴァンギャルドですね…」
「すごい一生懸命に考えた感想だね!?つーかアヴァンギャルドって何!?」
「か、革命的な芸術……とかそんな感じだったと思います…」
「確かに革命的だけれども!!」
…そんな私達の声が、穏やかな公園にこだましていた。
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雨散 - バレンタイン、妙ちゃんのチョコレートw (2019年8月5日 16時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» 続編でもコメントありがとうございました!!そうですね、ギャグに力を入れてます!笑ってくれたなら嬉しいです!続編もどうぞお楽しみくだされば幸いです! (2018年3月12日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - バレンタインの話、面白いところがたくさんあって笑いが止まらないです! 銀さん大変なことになってるし(笑)続きも楽しみにしてます! (2018年3月10日 14時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - インクさん» 情緒不安定ですね…(笑) お願いします…!!可哀想なマダオ(笑)にチョコを恵んであげてください!! (2018年3月6日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 銀さん、情緒不安定なんだ...(さすがマダオとか思ってないからね!?)銀さんやればかっこいいしモテると思うけど素があれだからなぁ...義理チョコでもいいから、銀さんにあげたい... (2018年3月6日 20時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年2月11日 18時