義理と本命 ページ35
「日下部さん!!」
「は、はい…!」
お妙さんに名前を呼ばれ、再び肩をびくつかせてしまう。迫力がすごかった。今にも机を引っくり返しそうなくらいだ。ちゃぶ台クラッシュをおみまいしそうな雰囲気だ。そんな彼女の迫力に負け、私はその場で縮こまってしまう。こんなに怒られるのは久しぶりなような気がする。机に手をついて、身を乗り出している彼女は続ける。
「沖田さんのこと、お好きなんですよね!?」
「うぇ…!?…あ、は、はい…!!」
「だったら、義理のと同じにしちゃダメです!!沖田さん落胆しますよ!!」
と、そう言われてしまい、私は「そうなんですか…?」と小さな、か細い声で問い掛ける。するとお妙さんは「そうなんです!」と堂々と口にした。そうなのか、と私は目を見開いた。そんなこと、考えていなかったのだ。彼等はバレンタインというイベントでチョコが貰えれば、それで嬉しいものなのだと思っていたのだ。もしかしてそれは、私の大きな勘違いなのだろうか。
「義理チョコの意味はご存じですよね?」
「は、はい…」
義理チョコというのは確か、恋愛対象ではない人物に義理の精神であげるチョコのことで、合っているだろうか。本命が、その逆。恋愛対象である人物に渡すチョコだ。そう答えると、彼女は頷いて続ける。
「恋愛対象に渡すチョコが、義理チョコと同じでいいと思いますか思いませんよね」
「…そ、う、かもしれません…」
お妙さんは捲し立てるようにそう口にして、私は納得する。そうだ。確かに、義理チョコと本命チョコを一緒にしては、見分けがつかないし、それに、あの沖田隊長だ。そんなものを渡していたら、ぶぅたれるに決まっていた。なんて馬鹿な見落としをしていたんだ私は、危なかった。
「分かりましたか?そんなこと、あってはならないですからね!」
「は、はい……すみません」
そう言って軽く頭を下げると、お妙さんは満足げに頷いた。
「どうせなら、家のキッチン貸しますから。作ってる所を見られずに準備できた方がいいでしょう?」
「え……いいんですか?」
ご迷惑じゃ…と呟くも、彼女は首を振って、迷惑なんかじゃないですよ、と。
「沖田さんに素敵なチョコ、送ってあげてください」
ふわりと彼女は笑って、そう言った。私は深々と頭を下げて、「ありがとうございます…!!」と伝えた。
やはり彼女には頭が上がらない。
1687人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨散 - バレンタイン、妙ちゃんのチョコレートw (2019年8月5日 16時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» 続編でもコメントありがとうございました!!そうですね、ギャグに力を入れてます!笑ってくれたなら嬉しいです!続編もどうぞお楽しみくだされば幸いです! (2018年3月12日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - バレンタインの話、面白いところがたくさんあって笑いが止まらないです! 銀さん大変なことになってるし(笑)続きも楽しみにしてます! (2018年3月10日 14時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - インクさん» 情緒不安定ですね…(笑) お願いします…!!可哀想なマダオ(笑)にチョコを恵んであげてください!! (2018年3月6日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 銀さん、情緒不安定なんだ...(さすがマダオとか思ってないからね!?)銀さんやればかっこいいしモテると思うけど素があれだからなぁ...義理チョコでもいいから、銀さんにあげたい... (2018年3月6日 20時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年2月11日 18時