悪魔の微笑み ページ17
…いつになくしゅん、とした様子の沖田隊長に、頬が緩むのを押さえきれなくて、私はついついニヤニヤとしてしまっていた。沖田隊長は基本ポーカーフェイスをぶら下げているし、その他は意地悪いドS面しかあまり見せてくれないから、何処か自信がなさそうな表情をしているのはとても珍しいことだった。きっと、真選組に居る皆さんが彼のこの表情を見たら、目を見開くだろうと思う。写メを撮っておこうという思考が働くだろうと思う。けれどこの表情を見ているのは私だけなのだと、少し優越感にすら浸ってしまっていた。
…が。そんな私のニヤつきは、沖田隊長の一言により凍り付くことになってしまった。
「……お前、何ニヤけてんでィ」
「…え」
…気付いた時には、もうすべてが遅かった。手遅れだった。私の笑顔は固まった。まるで一時停止のボタンを押されたかのように。そして、口角辺りがヒクヒクとしてくる。表情筋がどんな顔を私にさせればいいのか分からなくて混乱しているみたいに。曖昧で、不格好な笑みを、きっと私は浮かべている。そして。
「随分楽しそうじゃねェか……そんないいものでも見たのかィ」
「い、いやぁ…」
…さっきまでの子犬のような表情は何処へやら。今となってはそれはそれは恐ろしい笑顔を浮かべている。爽やかさなんて欠片もない。邪心を纏ったかのような真っ黒な色をした笑みだった。悪魔だと思った。これを悪魔の微笑みと言わずして何と言うのだろうか。数秒前までの沖田隊長、カムバック。切実にカムバック。
…まずいことになってしまった。可愛いとか思ってる場合じゃなかった。沖田隊長があんなに落ち込んだ顔をしていたのに私がそんな笑っていたら、バカにしていると曲解されてもおかしくはなかった。まぁ、可愛いと思ってしまっている時点でバカにしているという区域には入ってしまうのかもしれないけれど。
通常運転に切り替わってしまったらしい沖田隊長は瞬きすらしないままで私を見据えている。真っ直ぐに見据えている。怖い。
「言ってみろよホラ、怒らないから言ってみろよ何がそんなにおかしかった」
もう既に怒ってるじゃないですかあああああと心の中で悲鳴を上げながら、私の頭はもう逃げることだけを考えている。誤魔化すことは最早不可能だ。ここは取り敢えず逃げておこう。ほとぼりが冷めるまで別室で仕事をしよう。そうしよう、と私は決める。
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雨散 - バレンタイン、妙ちゃんのチョコレートw (2019年8月5日 16時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» 続編でもコメントありがとうございました!!そうですね、ギャグに力を入れてます!笑ってくれたなら嬉しいです!続編もどうぞお楽しみくだされば幸いです! (2018年3月12日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - バレンタインの話、面白いところがたくさんあって笑いが止まらないです! 銀さん大変なことになってるし(笑)続きも楽しみにしてます! (2018年3月10日 14時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - インクさん» 情緒不安定ですね…(笑) お願いします…!!可哀想なマダオ(笑)にチョコを恵んであげてください!! (2018年3月6日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 銀さん、情緒不安定なんだ...(さすがマダオとか思ってないからね!?)銀さんやればかっこいいしモテると思うけど素があれだからなぁ...義理チョコでもいいから、銀さんにあげたい... (2018年3月6日 20時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年2月11日 18時